ネアンデルタール人はゆっくり成長した、研究成果

現代人と同じくらいのペース、ゆっくりと大きな脳を育んだ

2017.09.22
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エル・シドロン洞窟の中に立つアントニオ・ロサス氏。(PHOTOGRAPH BY JOAN COSTA-CSIC COMMUNICATION)
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ある少年の物語

 6体の子どもの骨格のうち、「エル・シドロンJ1」と呼ばれる子ども(おそらく少年)の骨格はほぼ完全に残っていて、その生と死をある程度推測することができる。

 J1の身長は約120cm、体重は約26kgで、右利きだった。歯のすり減り具合から、大人たちのまねをして、家の仕事をする際に口を「第3の手」として使っていたこともわかる。(参考記事:「人類最古の右利きの証拠を発見、180万年前」

 歯のエナメル質がいくらか弱くなっていたことを除けば、J1の骨格に重大な病気の証拠はなかった。しかし、骨には死後に切断された跡があり、共食いの可能性も考えられる。歯には年齢の痕跡があるため、ロサス氏らは、これを少年の骨格の成熟度と比較した。

 歯が形成される際にはエナメル質に成長線が残り、木の年輪を数えて樹齢を知るように、この成長線を数えて年齢を知ることができる。研究チームはJ1の臼歯の1本を調べ、少年の死亡時の年齢を約7.7歳と推定した。

 次に、J1の骨格を現代の数千人の子どもの骨格と比較すると、今日の7歳児と8歳児に最も近いことがわかった。つまり、J1はホモ・サピエンスの子どもと同じゆっくりしたペースで成長していたのだ。

 ただし、頭蓋骨は現生人類の子どもと少し違っていた。J1の頭蓋骨の内面には、成長する脳による圧力を受けていた痕跡があり、その脳の大きさは平均的なネアンデルタール人の大人の約88%だった。

 こうした証拠から、研究チームはJ1の脳が成長の途中だったと主張する。そうだとすると、J1の脳の発達は現代の子どもより遅かったことになる。現代の子どもの脳は、7歳になる前に完全に発達しているからだ。(参考記事:「人間の脳は筋肉の退化と引き換えに進化」

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