色の推定は早計との声も

 だが、今回の論文はカウンターシェーディングを主張するのに必要な証拠を示していないと考える専門家もいる。

 米ドレクセル大学の研究者アリソン・モイヤー氏は、「標本は確かに素晴らしいものです。古生物学上の傑出した発見なのは間違いありません」と評価する。一方、「色素と体色、およびそこから捕食・被捕食の関係を導き出した結論には、問題点があります」

 ビンター氏が示した証拠は、ナショナル ジオグラフィック協会の支援を受けて調べられたものだが、現時点では間接的なものにとどまっている。ノドサウルス類の化石は驚異的な保存状態だったものの、発見できたのは、特定の色素が分解されたときに残ったと考えられる化学物質の痕跡だけだった。

 モイヤー氏は、化石の化学的構造が時間とともにどう変わったのか、黒っぽい膜は本当に化石化した皮膚なのかといったことについて、この論文は十分説明していないと話す。

 何より、論文で挙げられた分解産物と同じ物質が、ボレアロペルタが化石化したのと同じ環境である海底堆積物に自然に含まれる成分として、これまで複数の研究で記録されているという。「もっと慎重に考えてみると、カウンターシェーディングに飛びつく以外にも可能性は無限にあるのです」とモイヤー氏は語る。

 一方のビンター氏は、問題の成分は化石周辺の堆積物からは全く見つからず、ボレアロペルタの皮膚とみられる部分からのみ高い濃度で見つかったと反論する。

【フォトギャラリー】奇跡の恐竜化石、世紀の大発見 写真18点
【フォトギャラリー】奇跡の恐竜化石、世紀の大発見 写真18点
新種恐竜の頭部右側。タイル状の骨が特徴的だ。(PHOTOGRAPH BY ROBERT CLARK, NATIONAL GEOGRAPHIC)

「だとしても、フェオメラニンに関連するという成分は実は別の物質に由来し、恐竜の体内か周囲にあって、化石化の過程で分解された可能性もあります」と、スウェーデン、ルンド大学の古生物学者ヨハン・リンドグレン氏は話す。「動物の軟組織がどう保存されるかについて、私たちの知識が非常に乏しいということをあらためて感じます」

 ボレアロペルタを調べた研究者たちは、自分たちの研究はこの恐竜の体色について初めて発言したのであり、最終的な結論ではないことを強調した。

 ロイヤル・ティレル博物館のヘンダーソン氏は、このノドサウルス類をめぐって今後確実に起こるであろう、何年もかけた活発な議論を楽しみにしている。標本は博物館にあり、他の研究者があらゆる種類の技術で調べることができる。

「ボレアロペルタは」とヘンダーソン氏は続けた。「真に特別な存在に与えられる安全な場所にいます。誰かの居間に隠されてなどいないのです」(参考記事:「類人猿ギガントピテクス、大きすぎて絶滅していた」

文=Michael Greshko/訳=高野夏美