ゲノム編集でヒト受精卵を修復、米初、将来性は?

心臓病の遺伝子を改変、公的資金の使用は米国では不可

2017.08.04
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もう一度規制について話し合う時期

 体外受精の際に、着床前診断という手法で受精卵の遺伝子の異常を調べることは、現時点でも可能だ。研究チームは、将来的には自分たちのCRISPR技術を、嚢胞性線維症(のうほうせいせんいしょう)などの疾患の原因となる遺伝子変異に適用できるようになるだろうと考えている。

 研究チームの論文には、今後、自分たちの手法を用いて「突然変異のある受精卵を救い、母体に移植できる受精卵の数を増やして、妊娠率の向上につなげる」ことが可能になるかもしれないと書かれている。(参考記事:「【解説】人工子宮をヒツジで開発、ヒトに使える?」

 この点について、「話になりません」と米ボストン大学のアナス所長は断定する。「現時点では、赤ちゃんの変異遺伝子をなくすには、もとから変異のない受精卵を使うしか方法がないことを、彼ら自身も認めています」

研究チームは、編集した受精卵を胚盤胞の段階まで成長させた。(PHOTOGRAPH COURTESY OHSU)
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 ミタリポフ氏は本誌に、変異遺伝子を受け継ぐ確率が50%の場合、「受精卵の半数を破棄することは道徳的に悪いことです」と反論する。「私たちは、先を見越して行動する必要があります」

 いずれにせよ、米国内でのCRISPRをどのように規制するか、もう一度話し合う時期が来ている、とアナス氏は言う。「規制当局は怖れをなしているのではないでしょうか」

 ミタリポフ氏は、そうした議論は、自分たちの技術の可能性を世に知らしめる好機だと考えている。サルのクローン胚やヒトのクローン胚からES細胞(胚性幹細胞)を作成したことでも知られる彼は、公の議論に火をつける方法を十分に心得ている。彼は言う。(参考記事:「2013年、科学研究の5大ニュース」

「私たちは限界を超えてゆくのです」

文=Erin Blakemore/訳=三枝小夜子

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