ゲノム編集でヒト受精卵を修復、米初、将来性は?

心臓病の遺伝子を改変、公的資金の使用は米国では不可

2017.08.04
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民間資金による研究、海外での活動も視野

 論文の共著者でOHSU産婦人科非常勤講師のパウラ・アマート氏は、米国時間の8月1日に行われた記者説明会で、「もちろん、臨床試験に進む前に、さらなる研究と倫理面の議論が必要です」と語った。(参考記事:「【解説】ヒトの細胞もつブタ胎児の作製に成功」

 米国科学アカデミーと米国医学アカデミーは、今年、科学者と倫理学者からなる国際委員会に対して、ヒトでのゲノム編集の長所と短所を検討するように要請した。

 委員会の報告書は、ヒトの生殖細胞系(次の世代に遺伝子を受け渡す役割を担う細胞)については、疾患や障害の治療や予防を目的とする場合を除き、遺伝子編集を行うべきではないとし、そのような実験を始める前に、もっとしっかり議論しなければならないとしている。

 米国では現在、ヒトの受精卵や胚の「破壊」を伴う研究に公的資金を用いることは禁止されている。

 今回の研究は、研究機関や民間の資金を用いて進められたが、研究チームは、米国内でスムーズに研究を進めることができなければ、外国で研究を行うことを考えている。

 米シンシナティ大学心臓・肺・血管研究所の心臓部門長サクシベル・サダヤッパン氏は、遺伝子編集によりDNAから遺伝病を除去できるようになるのは遠い未来の話のように思われるかもしれないが、こうした研究は注意深く見守っていかなければならないと言う。(参考記事:「私はこうして「世界初の公認サイボーグ」になった」

 氏は今回の研究には関与していないが、「ワクワクするような研究で、未来はここにあると思います」と言う。

 ミタリポフ氏の実験の規模は小さく、不十分なものだ。けれどもサダヤッパン氏は、この研究は行う価値があるとして支持している。「もちろん、実現できるかどうかの調査研究も難題です」と彼は言う。「けれども科学は、こうやって進んでいくしかないのです」

 肥大型心筋症を研究しているサダヤッパン氏は、この技術のリスクは大きいが、成功したときの恩恵も大きいと考えている。「例えば、両親から変異を受け継いだ人が子どもを欲しいと思ったときには、この技術に頼るしか選択肢はありません」

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