このほど、NASAの木星探査機ジュノーが木星の大赤斑の上空をかすめるように飛行し、太陽系で最大級の嵐を至近距離から撮影することに成功した。(参考記事:「祝!探査機ジュノーが木星周回軌道に、偉業を解説」)
上空わずか9000kmのところから見た大赤斑は、とぐろを巻く濃赤色の巨大な雲の中に、小さな渦がいくつも並んでいた。
NASAのゴダード宇宙飛行センターのエイミー・サイモン氏は、「先代の木星探査機ガリレオが20年前に撮影した大赤斑のクローズアップ写真とは形が違っています」と言う。「興味深い小さな違いがたくさんあります」
Folks, it's #Jupiter's Great Red Spot from @NASAJuno Perijove 7!!!!!!! - https://t.co/nb5WAnLoBg pic.twitter.com/IugzWRzClq
— Kevin M. Gill (@kevinmgill) 2017年7月12日
NASAのジェット推進研究所のケビン・M ・ギル氏は、ジュノーが撮影した大赤斑の写真をツイッターに投稿した。
まぶたのない赤い目玉のような大赤斑の正体は、荒れ狂う巨大な嵐だ。どのくらい大きいかと言えば、目玉の中に地球がすっぽり入ってしまうほどであり、小さい望遠鏡でも容易に見ることができる。この嵐は数世紀にわたって続いていて、上空の空気を溶岩よりも高温に加熱している。(参考記事:「木星の大赤斑上空は1300℃、原因は嵐の音か」)
太陽系のほかの惑星にもこの規模の嵐はあるが、比較的短期間で消えてゆく。例えば、ボイジャー2号探査機が1989年に目撃した海王星の大暗斑は、1994年には消滅していた。また、2010年末に土星に発生した大白斑と呼ばれる白い色の嵐は、土星をぐるりと1周するほど長い尾をたなびかせていたが、翌年には跡形もなくなっていた。
木星の大赤斑はどうか? この惑星が存在するかぎり表面を彩り続けると言いたいところだが、この150年ほどは縮小傾向にある。
Perijove 07 @NASAJuno Great Red Spot https://t.co/8V0hwzJC9U pic.twitter.com/c28NntorRC
— Seán Doran (@_TheSeaning) 2017年7月12日
1800年代には大赤斑の直径は4万km以上と推定されていたが、今年4月には1万6350kmまで縮小している。その形は楕円形から円形に近づき、色も赤からオレンジ色になってきた。観測によると、大赤斑は現在、これまでで最も速いペースで縮小しているという。(参考記事:「木星の大赤斑が縮小、ハッブル観測」)
「大赤斑がいつ完全な円形になるのか、あるいは消滅してしまうのかは、これまでの長期的な傾向に従うかどうかによって決まります」とサイモン氏は言う。「どこかで安定するのかもしれませんし、大赤斑を破壊するような大きな出来事が起こるかもしれません」
サイモン氏は、長年ハッブル宇宙望遠鏡を使って大赤斑を観察しているほか、1870年代までさかのぼる観測データを持っているが、大赤斑は当時から目に見えて小さくなり始めていたようだ。(参考記事:「木星の“眼”、ハッブルが撮影」)
今回ジュノーが撮影したような画像は、嵐にエネルギーを供給したりエネルギーを奪ったりする木星内部の力学の解明に役立つはずだ。
「5年後には完全な円形になっている可能性があります」と彼女は言う。「けれども、同じ形状を保ったり、縮小のペースが早まったりすることもあり、予想は非常に困難です」(参考記事:「木星の芸術的な最新画像、「まるでゴッホの絵」」)