【動画】高貴な女性ミイラの顔を復元、驚異の技術

1600年前の南米モチェ文化の女性統治者か、科学捜査と3D技術を駆使

2017.07.06
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 彼女が重要な人物だったことは間違いない。身長150センチ弱の小柄で華奢な体は、いつでも戦闘に出られる戦士とは程遠い。おそらく統治者の妻か、あるいは彼女自身が統治者だった可能性もある。(参考記事:「2600年前の顔復元、鉄器時代の少女」

砂漠地帯モチェの乾燥気候で、女性の遺骸は干からびている。体の3D模型を製作した専門家たちは、絶えず細心の注意を払い、骨の折れるプロセスを進めた。(PHOTOGRAPH BY FUNDACIÓN AUGUSTO N. WIESE)
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 この女性の容貌を明らかにするため、まずはミイラのデジタル画像を作る必要があった。ツタンカーメン王やアイスマンの「エッツィ」といった類似の事例では、据え付け型の医療用CT機器で遺骸をスキャンしたが、今回の「セニョーラ」は、最新式の手持ち型レーザースキャナーで撮影した。3D技術を扱う企業、FAROが設計したものだ。元々は産業用途のために作られたが、今では犯罪捜査や、今回のような文化遺産プロジェクトでも有用であることが分かっている。(参考記事:「もはや芸術、ツタンカーメンの曾祖父母のミイラ」「鍛えた肉体、5000年前の男性ミイラ「アイスマン」最新復元模型 」

 スキャンで得られたデータをコンピューターに取り込んでから、法医学者たちはセニョーラの顔の復元に取り掛かった。専用のソフトウェアを使い、ディスプレイの中でまず顔の皮膚をはがし、骨だけにする。

 ここからは、彼女はあたかも殺人事件の犠牲者のようだった。相当古い未解決事件だ。他の遺体から得られたデータの平均値に従い、組織の厚さを決め、次に顔面筋を加える。「手作業で模型に粘土をつけていく伝統的な手法と全く同じプロセスです。今はデジタル環境になりましたが」と話すのは、全米行方不明・被搾取児童センターの復顔の専門家で、このプロジェクトで顧問を務めたジョー・マリンズ氏だ。

 ミイラの頭骨は、頬骨が高く、モチェの人々に典型的な顔の形を示していた。だが通常、生前にまとっている軟組織は死後に失われるため、これ以降の復元作業には、根拠に基づきつつも解釈が加わってくる。

 それどころか、セニョーラの状態はベストとは言えなかった。上下の唇は内側に引っ込み、鼻は失われ、両方の目とまぶたは乾いて落ちくぼんでいる。従って、彼女の外見の手がかりを得るには、別の情報源に頼らざるを得なかった。モチェの陶器に描かれた人々、出土したモチェの人骨の研究結果、百年前に撮影されたペルー北部の住民の写真、それに現在エル・ブルホ一帯に住んでいるモチェの子孫たちの顔だ。(参考記事:「ペルー、モチェ文化の生贄は戦争捕虜か」

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