ヤシオウム(Probosciger aterrimus)のオスは動物界のロックスターかもしれない。目的はやはりメスの気を引くことのようだ。(参考記事:「動物大図鑑 オウム」)
最新の研究によると、オーストラリアに生息するヤシオウムは人間以外で唯一、自作の道具を使って楽器のようにものをたたく動物だという。チンパンジーなどは棒と丸太でドラミングを楽しむが、そのための道具をつくることはない。研究の成果は6月28日付けの科学誌「Science Advances」に発表された。(参考記事:「ニューカレドニアカラスは釣り名人」)
論文の主要著者であるオーストラリア国立大学の保全生物学者ロバート・ヘインソーン氏は、1997年、オーストラリア北部でヤシオウムのオスによるこの行動を初めて目撃した。
「ヤシオウムはスティックのようなものを握り、木の幹をたたいていました。そして時折、動きを止めてはとさかを立て、甲高い声や金切り声を上げていました」(参考記事:「新種インコを発見、声はタカ似、残り100羽ほどか」)
興味を引かれたヘインソーン氏は20年にわたり、臆病なヤシオウムの映像を撮影し続けた。ドラムをたたくようなこの行動が音楽かどうかを確かめたかったからだ。本当に音楽であれば、一定のビートと反復、そしてもちろん、独自のスタイルが見られるはずだ。
ヤシオウムたちの演奏を分析した結果、はたして人間の音楽と同じように、繰り返しのパターンや一定のビートなど、極めて予測しやすいリズムを刻んでいることがわかった。しかも、石や棒を握るすべてのオスが独自の音楽スタイルを持っていた。なお、ナショナル ジオグラフィック協会はヘインソーン氏の研究を支援している。(参考記事:「「笑い声」で明るい感情が伝染、NZの希少オウム」)
メスにアピール
論文によれば、ヤシオウムのオスたちが演奏しはじめたときの約7割は、近くにメスがいたときだった。
しかも、多くの場合、ドラムだけでなく、歌と視覚的なディスプレイを組み合わせていた。(参考記事:「フォトギャラリー:ゴージャスな羽を誇る美鳥14選」)
「彼らは性的に興奮すると、頬が赤くなるんです」と、彼らの目的が明らかである証拠をヘインソーン氏は説明した。
ただし、今回の研究ではメスの反応を調べていない。