死の熱波、2100年には人類の4分の3が脅威に直面

温室効果ガスを削減せずに放置した場合の最悪のシナリオ

2017.06.22
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熱波による犠牲者

 モラ氏と多数の国の研究者や学生からなるチームは、3万件以上の資料を調査し、暑さに起因する死者が出た都市や地域について、1949件の事例を集めた。死者を伴う熱波は、ニューヨーク市、ワシントンD.C.、ロサンゼルス、シカゴ、トロント、ロンドン、北京、東京、シドニー、サンパウロでも記録されている。

 最も危険なのは、高温湿潤な熱帯地域に住む人々だ。このような場所では、温度や湿度の平均がわずかに上がるだけで、死につながる危険が生じる。しかしモラ氏によると、平均気温が30℃を下回る穏やかな地域であっても、湿度が高くなれば死者が出ることもあるという。(参考記事:「研究報告:「温暖化は停滞」に反論」

 医学史を専門とする米ウィスコンシン大学マディソン校のリチャード・ケラー教授は、米国の暑さによる死者数はトルネードなどの他の異常気象による死者数より10倍多いという。

2010年8月9日、ロシアの首都モスクワ、クレムリンのそばにあるマネージュ広場。2010年のモスクワは、山火事によって発生した有害なスモッグに覆われていた。この年、ロシア西部の猛暑による死者は5万5000人にのぼった。(PHOTOGRAPH BY IVAN SEKRETAREV, ASSOIATED PRESS)
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 2003年のヨーロッパ熱波に関する本を執筆したケラー教授は、不意に熱波に襲われるのは、暑くなるのは夏だと思いこんでいるからだという。

 人間の体温は37~38℃ほどに保たれており、体温がそれ以上になると、熱がある状態になる。気温が上がった場合、体は汗をかいて体温を下げようとする。

 体温が40℃に近づくと、重要な細胞組織が壊れ始める。40℃を超えると、即座に治療を要する非常に危険な状態になる。

 温度と湿度を組み合わせた指標である熱指数が40℃に達すると、体を冷やそうとしない限り、体温は徐々に気温に近づいてゆく。

 暑さの影響を最も受けやすいのは、子どもや高齢者、とりわけ過度の貧困や社会的に孤立した状況にある人々だ。ケラー教授によると、2003年のヨーロッパ熱波によるフランスでの死者1万5000人のうち、大半は75歳以上の高齢者で、その多くが一人暮らしだったという。(参考記事:「【解説】温暖化で生物は?人はどうなる?最新報告」

 ケラー教授は、「熱波による死者の増加の背景には、格差の拡大がある」と述べている。

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