米国のウナギビジネスに未来はあるか

特別レポート:米国ウナギビジネスの闇(3)

2017.06.22
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漁師のソール・ラブ氏(左)とジョセフ・ダナ氏が、シラスウナギが詰まったクーラーボックスを持ってビル・シェルドン氏の店を訪れた。(PHOTOGRAPH BY SARAH RICE, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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養殖を目指して

 シェルドン氏とアダム・ドラゴン氏には1世代の隔たりがあるが、将来については意見が一致している。「一家でウナギ養殖に携われたらと思います」とアダム氏。「シラスを捕り、養殖し、国内に売るのが夢です」

 すし人気の高まりに伴い、ウナギ需要はアジアのみならず世界中で高まっている。シェルドン氏も、「この業界の未来は全て養鰻にあります」と話す。「ここでウナギを育てて、国内で消費しない分を外国市場に回す。いま売っているのと同じ相手に売るのです。それがとても合理的です」(参考記事:「完全養殖ウナギの量産化はどこまで可能か?」

タモ網を使う漁師は、岩の多い海岸線で一晩中シラスウナギを捕る。各自の年間漁獲枠に達するまで、それを毎晩繰り返す。枠は4ポンド(約1.8キロ)から150ポンド(約68キロ)まで幅広い。(PHOTOGRAPH BY SARAH RICE, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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 だが、行く手には障害もある。魚の養殖は費用がかかるし、アジアで一般的な養殖方法の中には、米国で認可されていないものもある。例えば、ホルモンの使用だ。ウナギは成長過程で、オスにもメスにもなり得る。密度の高い養殖池ではオスの割合が高くなりやすい。そこでメスを増やすためにホルモン剤が与えられたり、ウナギの成長を促すためにホルモン剤が用いられたりするという。(参考記事:「「正しい養殖」を求めて」

「ここで養鰻が実現するころには、私は生きていないでしょう」とシェルドン氏。「今のところは、漁業を維持しつつ稚魚を捕って売るのが理にかなっています。長靴とタモ網を持っているだけの男にとってはありがたい漁業です」

 ショッピングモールが並ぶエルズワースの大通りの角にすし店がある。「ウナギ・キュウリ巻き」を6ドルで食べられる店だ。

 すしは好きかとシェルドン氏に尋ねると、「あまり」と顔をしかめた。次いで、彼はシラスウナギが入ったボウルに歩み寄ると、数匹を生きたままつまみ、一度に飲み込んで見せた。「すしと同じですよ。試してみて」と筆者に勧める。「長寿と知恵に恵まれます」

 その場のみんなが笑った。だがシェルドン氏は暗い顔になり、「かなり重い罪に問われてしまって」と言った。「でも、法廷で弁明する機会は誰にでもあります。私の場合はこれからです」

2017年春のシラスウナギは豊漁。メーン州では、タモ網を使う漁業者の多くが、漁期の中盤にはもう漁獲枠に達していた。(PHOTOGRAPH BY SARAH RICE, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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おわり

特別レポート:米国ウナギビジネスの闇
第1回 ウナギ闇取引を摘発、親玉は「ウナギ漁の父」
第2回 ウナギ版ゴールドラッシュに狂奔する漁師たち

文=Rene Ebersole/訳=高野夏美

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