生きたロバをトラの餌に、動画が炎上、問題点は

中国の動物園、「ロバもトラも、来園者も被害者です」と専門家

2017.06.13
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 ニール氏によれば、北京動物園や上海動物園といった施設は市の部局が運営しており、娯楽よりも保護に重点を置いている。一方、今回のような事例は、中国国家林業局の目が届きにくい都市部以外のサファリパークで最もよく見られる。

 淹城野生動物世界は中国動物園協会(Chinese Association of Zoological Gardens)の認証を受けていると、ニール氏は話す。しかし、同協会は誠実な趣旨を掲げてはいるが、厳しい動物福祉の基準を加盟園に実行させるだけの財源がないのだという。5日の出来事を受けて何らかの対応を予定しているのか、ナショナル ジオグラフィックは同協会に尋ねたものの、現時点ではまだ返答はない。

野生のトラのようには殺せない

 飼育場の障壁が足りなかったことに加えて、別の問題も明らかになったとクレス氏は言う。動物園のトラは、生きた動物を食べるように育てられていない。野生のトラはシカや水牛から、時には家畜まで、実に様々な獲物を襲って食べるが、まともな動物園は牛肉や馬肉をトラに食べさせ、生きて呼吸している動物を与えることはない。

「今回の場合、2頭のトラがロバを襲ったのは空腹ではなく好奇心ゆえです」とクレス氏は話す。「見たところ、この手の動物をどうやって倒すのか、何をすればいいのか、全然分かっていないようです」

 実際、映像のトラは確かにロバを攻撃しているものの、野生動物のドキュメンタリーで見るような、体の仕組みを踏まえた効率的な捕食者の殺し方とは程遠い。野生のトラは獲物に忍び寄り、首をきつく締めて、数分で殺すことができる。(参考記事:「【動画】都市に出没したトラ、無事に森へ、ロシア」

 しかも、飼育下のトラは狩猟本能が乏しいため、例えば角のある動物でも投げ込まれれば、トラの方が負傷する可能性もあるとクレス氏は指摘した。

「動物と人の安全が最優先であるべきです」とニール氏は話す。「ですから、この件は動物園側に大きな非があります。たった1度の出来事だったとしてもです」

文=Jani Actman/訳=高野夏美

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