重力レンズ使った星の重さ測定に成功、ハッブル

アインシュタインの「不可能な実験」がついに実現した

2017.06.09
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2400km先のホタルを探すように

 ちょうどよい星の並びを探すため、サフ氏のチームは、レンズになりそうな恒星を約5000個検討し、ようやくスタイン2051Bを見つけた。

 たいへんだったのは、その後だ。2つの恒星がちょうどよい並びになることと、それを実際に観察できるかどうかは別問題だった。サフ氏によると、空の中で恒星が移動する距離は「耐えがたいほど小さい」という。

 彼はこの観測を、「1匹のホタルが25セント硬貨の片方の面からもう片方の面まで飛ぶのを2400km離れた場所から検出しようとするのと同じです」と説明する。「そのうえ、ホタルのすぐ隣には明るい電球(白色矮星)があって、電球のギラギラした輝きの中でかすかに光る蛍の小さな動きを検出する必要があるのです」

【参考動画】ハッブル宇宙望遠鏡のシミュレーションで深宇宙を旅しよう
ハッブル宇宙望遠鏡が見せてくれる壮麗な宇宙を旅することができたらどんな感じだろう? ガム29星雲とウェスタールンド2星団の3D画像をお楽しみください。

 サフ氏は、現時点で最高の宇宙望遠鏡を使って、2013年10月から2015年10月にかけて8回の観測を行った。(参考記事:「ハッブル望遠鏡 50の傑作画像 その3」

 予想どおり、スタイン2051Bの重力は、遠方の星からのかすかな光を曲げ、見かけの位置をずらしていた。研究チームは、このずれにもとづき、白色矮星の質量を計算することができた。その結果、スタイン2051Bの質量は太陽の約68%、直径は約1%であることがわかった。この数値は、1930年にスブラマニヤン・チャンドラセカールが恒星のコアの原子間に働く量子力学的相互作用を説明するために提唱した理論による予想とほぼ正確に一致している。

「彼の理論では、白色矮星の質量が増加すると半径は小さくなると予想されていましたが、私たちが測定した恒星の質量は、そのことを厳密に立証していたのです!」とサフ氏は言う。

「ある意味、意外な結果でした。測定により予想が厳密に裏付けられることはめったにないからです。とはいえ、これまで使ってきた理論が正しいことがわかったのは、良いことです」

 サフ氏らは、地球から近いところにある10億個の恒星を観測している欧州宇宙機関(ESA)の宇宙望遠鏡「ガイア」か、NASAが近く打ち上げることになっているジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を使って、ほかの恒星の質量も測定したいと考えている。(参考記事:「圧倒的!「高解像度宇宙望遠鏡」の建設構想を発表」

 米エンブリー・リドル航空大学のテリー・オズワルト氏は、「アインシュタインは鼻高々でしょう」と言う。「自分の主要な予想の1つが、厳格な試験に合格したのですから」

文=Nadia Drake/訳=三枝小夜子

  • このエントリーをはてなブックマークに追加