重力波検出に成功、30億年前のブラックホール衝突

3度目の快挙、重すぎるブラックホールはどうしてできたのか?

2017.06.05
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 ハガード氏は、「ブラックホールの質量を説明する方法を考える必要があります」と言う。「最初の発見のときも、この点は問題でした。太陽の30倍の質量のブラックホールというのは、ありえないとは言いませんが、少々意外です。今回発見されたブラックホールは、本当に大きいのです」

 こうしたブラックホールを説明する方法の1つは、もとになった大きな恒星が、主として水素とヘリウムからできていたとすることだ。これなら、恒星風は穏やかで、質量の損失も少ないので、恒星が死ぬときには、より質量の大きなブラックホールになることができる。

 かつて、球状星団ではこのような恒星が多くみられた。球状星団とは、非常に古い恒星が密集している天体で、銀河のまわりを軌道運動している。球状星団は、私たちの銀河系にもある。(参考記事:「地球外知的生命が「球状星団」に存在しうるこれだけの理由」

球状星団の中で生まれた?

 研究チームは、重力波の信号から、融合前のブラックホールの自転方向や自転軸の向きなど、さまざまな特徴を推定することができた。キャドナーティ氏は、これらの情報から、衝突は球状星団の中で起きたようだと考えている。

 今回のLIGOのデータによると、融合前のブラックホールの自転は揃っていなかった。つまり2つのブラックホールは、球状星団の中の離れた場所で形成されたようだ。それらが星団の中心に向かって落ち込んでゆき、最終的に死のらせんに捕まってしまったのかもしれない。

 この説明は、現在のデータとよく合うように見えるが、シグルドソン氏は、1つのシナリオだけが正しいと考える必要はないと言う。「個人的には、大質量ブラックホールは、銀河の中でも球状星団の中でも形成されると考えています。私たちが遠くから見ている大質量ブラックホールは、球状星団に操られているのかもしれません」(参考記事:「ブラックホールは食べ残しを投げ捨てるとの新説」

「大質量ブラックホールは、球状星団とその起源について新たな事実を教えてくれようとしています。この点は、私がこの夏に主催するワークショップの主要なテーマになるでしょう」

 疑問への答えは、LIGOでのさらなる重力波の検出と(近いうちにいくつか検出されるだろう)、新しい観測データに合わせて理論が改訂されることによって導き出されるはずだ。

 ハガード氏によると、LIGOのデータは、恒星や星団の進化に関する通説や、謎の物質「ダークマター」の概念に疑問を投げかけているという。その一方で、アインシュタインの一般相対性理論は、非常によく持ちこたえている。LIGOのデータは、理論の予測ときれいに一致している。

「ブラックホールの形成についての天体物理学理論は、ひっくり返されてしまいました」とハガード氏は言う。「けれども、物理学自体はしっかりしています」(参考記事:「ブラックホールの素朴な疑問に答えます」

文=Nadia Drake/訳=三枝小夜子

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