撃たれたゾウに潰され、ハンターも圧死 ジンバブエ

追い詰められたゾウの危険性を示す事故、“趣味の狩猟”にも物議

2017.05.25
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水場に向かうジンバブエのゾウの群れ。(PHOTOGRAPH BY BOB SMITH, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
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 銃で撃たれた雌のゾウが、トロフィーハンター(趣味で狩猟を行う人)の上に倒れ掛かり、圧死させるという事故が起こった。ジンバブエでの出来事だ。

 亡くなったのは、南アフリカ共和国に住むテュニス・ボータ氏。英テレグラフ紙によると、ボータ氏は5月19日、ワンゲ国立公園近くのグッドラック農場で、ハンターの一団を率いて狩猟に出かけ、子育て中のゾウの群れに行き合った。3頭のゾウがまっすぐに突進してきたが、さらに4頭目のゾウが、ハンターらの不意をついて脇から襲い掛かってきた。(参考記事:「【動画】母親ゾウ、リカオン集団からわが子を守る」

 この4頭目がボータ氏を鼻で持ち上げたため、ハンターの一人がゾウを撃つと、ゾウはボータ氏の上に崩れ落ちた。その結果、ゾウとボータ氏の両方が命を落とした。

 ゾウは共感などの感情を示すことで知られており、なかには死んだ仲間を悼むような行動を見せるものもいる。彼らは群れの中で社会を築き、ちょっとした仕草や体の動きなどで互いにコミュニケーションをとっている。(参考記事:「人のように話すゾウ、鼻を使って発音」

 ゾウは従順な動物だと考えている人もいるだろうが、今回の事故からもわかる通り、彼らは脅威を感じたときには非常に危険な存在となり、人間に襲い掛かることもある。ゾウが攻撃的になれば、体の大きさでは到底かなわない人間は死の危険にさらされる。

ジンバブエの水場でたわむれる2頭の若いアフリカゾウ。(PHOTOGRAPH BY BOB SMITH, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
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 とはいえ、ゾウと人間の関係でいえば、圧倒的に不利な立場にあるのはゾウのほうだ。毎年3万3000頭もの個体が、象牙を目当てにした密猟の犠牲になっている。(参考記事:「日本で違法な象牙取引が横行、覆面調査でも確認」

 ゾウの個体数を空から計測するプロジェクト「グレート・エレファント・センサス(GEC)」によると、ジンバブエはアフリカ諸国の中でも数少ない、ゾウの生息数が比較的安定している国の一つだ。2005年以降、同国のゾウは約11%減少しているが、この数値はアフリカ全体の30%減よりはるかに低い。それでも、不安定な経済、観光客の減少、干ばつなどが原因で、ゾウの生息数を保持するのは徐々に難しくなっている。(参考記事:「史上最大のゾウ調査、アフリカ上空を46万キロ」

 トロフィーハンティングを擁護する人々は、裕福な外国人がこうした狩猟に対して支払う金額の一部は、地元のコミュニティやゾウの保護に使われていると主張する。(参考記事:「ゾウを殺してゾウを保護するという矛盾」

 しかし多くの場合、地元コミュニティが受ける恩恵は決して大きくない。狩猟業界はさほど多くの人を雇用するわけではなく、ハンティング用の土地の確保には政府の腐敗が影響を及ぼし、トロフィーハンティングがあるからといって密猟がなくなるわけでもない。象牙目当ての密猟は、アフリカ南部のゾウにとって最大の脅威だ。(参考記事:「米国人による“趣味の狩猟”で大量の動物が犠牲に」

 同地域でのトロフィーハンティングが国際的な注目を集めたのは、これが初めてではない。2015年には、同じ国立公園の外でライオンの「セシル」が米ミネソタ州の歯科医ウォルター・パーマー氏によって殺されたことをきっかけに、世界中で怒りの声が上がり、トロフィーハンティングに対して厳しい目が向けられるようになった。ただ、狩猟当日にパーマー氏をガイドしていた地元業者に対する告訴は、現在は取り下げられている。(参考記事:「殺されたライオン「セシル」が愛された理由」

文=Heather Brady/訳=北村京子

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