オオヨロイトカゲ、10年後には絶滅も、密猟で激減

まるで「ホビット」の邪竜スマウグ、南アフリカ

2017.05.19
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伝統的な媚薬かペットの闇取引に

 個体数の減少が危惧されているため、オオヨロイトカゲの捕獲許可を南アフリカ政府から得るのは、不可能ではないにしてもかなり難しい。しかも、飼育下での繁殖に成功したという報告はない。にもかかわらず、政府に申告されたオオヨロイトカゲの輸出数は右肩上がりで、1985~1994年の10年間には357匹だったのが2005~2014年の10年間には660匹に増えている。

 したがって、密猟者は野生の個体をさらって「ロンダリング」し、輸出書類では飼育下で生まれたと申告しているのだとパルスナス氏らは考えている。

 関係機関に申告されずに国外に持ち出されたオオヨロイトカゲがどれだけいるのか、研究者たちもつかめていないが、ゼロでないことは明らかだ。例えば2016年8月、オランダの捜査当局は、南アフリカからアムステルダムに空路で到着した男性のスーツケースからオオヨロイトカゲ19匹を発見した。この人物は、ドイツでの爬虫類フェアに行く途中だった。(参考記事:「風変わりなペットたち」

 爬虫類ファン向けのウェブサイトには、オオヨロイトカゲに関して「購入希望」や「販売中」という広告が出ている。公的機関に届けられている売買よりも、闇取引の方が「ずっと大規模」だろう、とパルスナス氏は話す。

 同じくらい把握できないのが、「ムティス」(muthis)という南アフリカの薬品市場で売るために捕殺されるオオヨロイトカゲの数だ。この地域では伝統的に、女性がオオヨロイトカゲの粉末を食べると、パートナーが多くの交際相手を持つことに寛大になるという。(参考記事:「1.3億円相当、センザンコウのウロコ4トン押収」

 今回発表された論文は、今いるオオヨロイトカゲの成体の数を約68万匹と推計している。こう聞くと大きな数だが、この種は成熟が遅い上、1度の繁殖で数匹しか生まれず、繁殖は数年おきにしか行われない。世界の野生生物の状態を監視する国際自然保護連合(IUCN)は、レッドリストでオオヨロイトカゲを危急種(vulnerable)に分類しているが、今回の論文もこの分類を継続すべきだとしている。

生息地の調査では、巣穴に仕掛けられたわなや掛け針付きのワイヤーがたくさん見つかった。そうした巣にトカゲの姿はなかった。(PHOTOGRAPH BY SHIVAN PARUSNATH)
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「残念ながら、こうした要因のためにオオヨロイトカゲは非常に不安定な状況に陥っています」と語るのは、エルンスト・バード氏だ。同氏は南アフリカ、西ケープ州にある生物多様性保全機関「ケープネイチャー」取締役として、生物多様性の支援にあたっている。(参考記事:「南アフリカ最大の保護区で野生動物を堪能」

 オオヨロイトカゲの保護に役立てるため、研究者たちは自主的に保護区域を設けるよう土地所有者に呼び掛け、密猟の痕跡があれば報告するように協力を求めている。

 別の選択肢もある。今は合法とされている輸出を全て禁止するのだ。だがパルスナス氏は、悪質なコレクターの所有欲をさらにかき立てるかもしれないと指摘する。

「こうした美しい動物が野生のすみかから持ち去られ、日本や米国で誰かのガラス製水槽の中に収まっている」のを見れば、とパルスナス氏は言う。「誰でも自問するはずです。何の意味があるのかと」

文=Traci Watson/訳=高野夏美

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