エジプト沖の紅海を潜っていたダイバーが、ウツボの華麗なハンティングの瞬間を動画に収めた。
標的になったのはフグ。ウツボは海底にいたフグにゆっくり近づくと、口を開けて素早く捕まえた。不意打ちを食らったフグは逃げようと、体を2倍ほどの大きさに膨らます。
大きく膨らんだフグに、ウツボも苦戦しているように見えたが、最後はフグを押しつぶし、丸のみしてしまう。(参考記事:「【動画】ウミヘビが大きなウツボを丸のみに」)
撮影したのはビタル・バザロフ氏。友人とダイビングをしていてこの場面に遭遇した。
攻撃を仕掛けたウツボも、防御に回ったフグも、それぞれの持ち味である戦略を取っている。
フグは危険に直面すると、大量の水を腹に吸い込む。ウツボは膨れ上がった体をくわえ続けるのが難しくなり、フグは隙を見て逃げるという作戦だ。(参考記事:「生きるために膨らむ動物たち」)
一方のウツボはさらに攻撃的な戦略を用いている。ウツボは「咽頭顎」という第2の顎を持ち、獲物をくわえたまま、口の奥深くまでのみ込むことができる。
米ナショナル水族館の潜水プログラム責任者ホリー・ブルボン氏によると、ウツボが獲物を確実に仕留めるのに第2の顎が欠かせないという。「ウツボは自分の体を結んだりほどいたりして、獲物をのみ込むこともあります」(参考記事:「【動画】深海魚のヌタウナギ、自分の体を結んで攻撃&防御も」)
フグの防御法は体を膨らませることだけではない。猛毒を持つ種もいる。
動画のウツボはフグを捕まえ、食べることに成功したが、もしかしたらこれが最後の食事になるかもしれない。フグは自分が食べた動物にいる細菌が合成した毒を体内に蓄積する。動画のウツボが生き延びられるかどうかは、フグの種や生息地によるだろう。
日本にはフグを食べる習慣があるが、適切に処理しなければ、命を落とす危険もある。一部のフグが持つテトロドトキシンという毒には、今のところ解毒剤がない。(参考記事:「致死量の8000倍の毒に耐える魚、進化の秘密を解明」)