【解説】温暖化で生物は?人はどうなる?最新報告

予想外の速度で生物の分布が変化、人間への影響も拡大、サイエンス誌

2017.05.02
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半数の種の分布が変化

 気候条件が変われば生物種は生息範囲を変えるだろうと、科学者たちは昔から推測していた。ただ、そのペースがこれほど早いとは予想していなかった。

 世界の4000種以上に関する記録からは、その約半分が移動中であることが分かる。陸上の種は10年で16キロ以上移動しており、海中の種はその4倍もの速度だ。個々の種を見ると、さらに速いペースの者たちもいる。英国プリマス大学の科学者カミル・パルメザン氏によると、大西洋のマダラと欧州の蝶であるイリスコムラサキは、生息域の移動距離が10年で200キロを超えているという。

 温暖化は、生物学的サイクルのタイミングもずらしつつある。世界的に、カエルなどの両生類の繁殖期が10年で平均8日ずつ早くなっており、鳥やチョウでは4日だ。『ウォールデン 森の生活』の著者、ヘンリー・デビッド・ソローがつけていた記録を紐解いた科学者らは、米マサチューセッツ州コンコードの多くの植物が現在、1850年代よりおよそ18日早く芽吹くことを明らかにした。

「世界のあらゆる場所で、春の兆しが早くなっています。中国、日本、韓国、そしてヨーロッパ全域でもです。これは何よりも強力なシグナルです」と指摘するのは、米ボストン大学の生物学教授、リチャード・プリマック氏だ。「木々や低木が春にいつ若葉を出すかで、成長シーズンのタイミングが全て決まります。森の生態系を丸ごと作り変えてしまう可能性もあります」

米国アラスカ、デナリ国立公園のカリブー。グリーンランドでは、気候変動でカリブーの死亡率が上昇している。カリブーは夏にこの繁殖地に到着するが、餌となる植物の量のピークがそれよりも前にずれたためだ。(PHOTOGRAPH FROM DESIGN PICS INC, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
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 こうした異変の行き着く先は、簡単には予測できない。ある生態系の中で生息域や行動の時期をずらす種がいても、すべてが同じペースでずれるわけではないし、同じシグナルにいっせいに反応するわけでもない。温度変化に適応する者たちもいれば、むしろ日光や降水の増減に左右される者たちもいる。カリフォルニア州では、山地に生えるマウンテンヘムロックのような木がむしろ標高の低い、温度の高いところに移動している。気候変動によって、昔は乾燥していた谷で降水量が増えたためだ。コロラド州のある地域では、野草の花々が咲く期間が1カ月長くなった。以前のように、どの花も一斉に咲くわけではなくなったのだ。

 そして世界中で、新たな交雑種が現れている。今のところ記録されているのは、カエル、サメ、チョウ、クマ、マスなどだ。これまで出会うことのなかった種が気候変動によって接触し、交雑することで、こうしたハイブリッドが生まれる。(参考記事:「アザラシの交雑、北極のハイブリッド」

 生態学上の結びつきが断たれることで、危機に瀕する種もいる。その1例が、毎年春に熱帯から北極付近に渡り、繁殖して昆虫を食べる海岸の鳥、コオバシギだ。繁殖地での開花が早まり、コオバシギが到着する数週間前に昆虫も孵化してしまう今では、コオバシギの幼鳥の餌が激減してしまった。また、群れが西アフリカに戻っても、幼鳥のくちばしが小さすぎて、なかなか砂浜で貝類を取ることができない。(参考記事:「北極温暖化でシギが小型化、南半球でも生存不利に」

 同様にグリーンランド西部では、幼いカリブーの死亡率が上昇している。母親が出産シーズンに食べる植物が不足しているのだ。日本では、薬にもなる多年草のエゾエンゴサクが、マルハナバチが現れて授粉を始める前に開花し始め、その結果、種子の数が減っている。世界的には、マルハナバチは気温上昇によって南方の生息地にすめなくなっており、理由は不明だが北上もあまりしていない。(参考記事:「マルハナバチの1種が絶滅危惧種に、米国で初」

「バードウォッチャーであれ、漁師やハンターであれ、野外で時間を過ごす人なら動物の行動時期や移動状況が変化していることに気付いています」と、デビッド・イノウエ氏は言う。米メリーランド大学カレッジパーク校名誉教授のイノウエ氏は、ロッキー山脈で何十年も調査をしてきた。「社会全体が影響を受けているという事実が、より最近新たになってきたかもしれません」

 こうした種の移動はますます人に影響を与え始めており、特に最北の地で著しい。その様相は、誰も予想しなかったものだ。

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