【動画】クジラの背中から撮影、南極海の迫力映像

採餌行動、深海への潜水、社会的交流などが「クジラ目線」で観察可能に

2017.05.01
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意外な発見

 これまでの研究から、ほかの動物たちが陸地に近いところでオキアミ(エビに似た甲殻類)を探すのに苦労しているときにも、ザトウクジラが開氷域で大量のオキアミを食べていることはわかっていた。しかし今では、ザトウクジラの体重がいつごろから増えはじめるかを追跡したり、どの餌場が最も餌が豊富で、周囲の環境がどのようになっているかを調べたりすることも可能だ。(参考記事:「【動画】巨大クジラが獲物を丸のみ、選り好みも」

「衛星タグによる追跡データしかなくてカメラがなかったら、ザトウクジラたちが氷の海で餌を食べているのかどうかも、周囲にほかのクジラがいるのかどうかもわかりません」とフリートレンダー氏は説明する。「彼らがいる場所と、ほかの捕食者やオキアミや氷の位置関係を考え合わせることにより、南極海の生態系の中でクジラたちがどのような位置付けにあるかをはっきりさせることができるのです」

 調査からは、意外な事実が明らかになっている。クジラたちは、予想よりはるかに深いところで餌を食べていた。映像からは、餌が十分にあり、クジラたちが体を回転させて遊び戯れるだけの余裕があることがわかった。このような遊びは社会的戦略であり、クジラたちが協力して狩りをし、より多くの餌を得るための練習になる。(参考記事:「【動画】クジラが集団大移動するレア映像を撮影」

 クジラたちは、海氷や氷河が砕けてできた浮氷の下を予想以上に長時間泳いでいて、休んだり呼吸したりするときには、噴気孔を使ってそれらの氷をどけていた。

「海の氷の下で泳ぐクジラたちは本当に美しいのです」と彼は言う。「彼らの行動はどんどん変化し、海面付近から深海まで動き回り、じっとしていることがありません。正直なところ、映像を見ていて、彼らが何をしているのかわからないことがたくさんあります」

 北極海のザトウクジラやその他の海洋哺乳類を調べているワシントン大学の極地研究者クリスティン・レードル氏は言う。「極地環境で暮らす動物について理解を深めるためには、彼らの行動や動きや生息地の利用法を、離れたところから追跡するしかありません」

 フリートレンダー氏のチームは、ドローンを使った空撮と、水中での撮影を両方行うことで、複数の視点からクジラの行動を追跡することもある。(参考記事:「ドローン空撮コンテスト、圧巻の入賞写真9点」

 ときには、カメラを付けたクジラが近くで浮上し、自分たちの姿が録画されているのを見ることもある。

「カメラを付けたクジラが、私たちを偵察するために水面から垂直に体を出したり、私たちの真下の水中で体を回転させたりすることもあります。人間を小さなおもちゃ扱いして、何時間も撮影していましたよ」とフリートレンダー氏は言う。「クジラは神秘的で、魅力的で、好奇心の強い動物です。彼らの目線から自分を見るのは、実にクールです。彼らが撮影した映像を見ると、自分たちがよそ者であることを思い知らされます」

「もちろん、本当に知りたいのは、自分が写っていない、海の中の世界のほうなのですが」

文=Craig Welch/訳=三枝小夜子

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