【解説】人工子宮をヒツジで開発、ヒトに使える?

すでに1歳になったヒツジも、超早産児への応用に期待

2017.04.28
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【動画】4カ月早く生まれ、困難を乗り越えた小さな女の子 デイビッド・テリー・ファイン氏が監督し、公共ラジオ放送「Radiolab」でも放送された短いドキュメンタリー。医師には8割の確率で生きられないと言われたが、小さな体が持つ強い心と、医療技術がもたらした難しい決断が語られる。

胎児を育てる袋

 フィラデルフィア小児病院のチームは、3年前から人工子宮の研究に取り組んできた。最新版の人工子宮では、発達の状態が人の胎児の23週に相当する妊娠105~108日のヒツジの胎児5匹を母体から外科的に取り出し、試験に用いた。また、妊娠115~120日のヒツジの胎児3匹でも試験を行った。

 その結果、最も妊娠期間が短かった子ヒツジでも人工子宮内で正常に育ち、袋にいる間に動いたり目を開けたりし、毛も生えてきた。肺その他の仕組みが十分育った段階で、子ヒツジは袋から「出産」されて人工呼吸器をつけられ、正常な肺機能を示した。

 米ミシガン大学体外循環研究ラボラトリーの小児・胎児外科医、ジョージ・ミチャリスカ氏は「とても有望かつ見事な結果」と評価する。同氏はロバート・バートレット氏と共に、子宮に似せた人工機器を初めて考案し、独自の人工子宮を10年にわたって開発している。

 フィラデルフィアの研究チームによる機器は、血液を送り出すポンプ機能を胎児自身の心臓に頼っているが、ミチャリスカ氏らの機器は機械のポンプを使う。いずれも胎児は人工羊水を吸ったり吐いたりするが、ミシガン大学の物は胎児が袋の中で羊水に浸かる形ではない。

 どちらの研究チームも、各自の仕組みの利点を挙げる。前者は小さな心臓に余計な負荷をかける機械のポンプを使わずに済み、後者は早産児に何かあればすぐ処置を始められる。だが、どちらも人間での試験はまだ行われていない。(参考記事:「【解説】ヒトの細胞もつブタ胎児の作製に成功」

映画『マトリックス』の世界ではない

 何であれ人工子宮システムの目標は、胎児を完全に母体の外で育てることではないとミチャリスカ氏は言う。「それは『マトリックス』の世界です」として、人が容器の中で育つ1999年の映画のようになる可能性を退けた。(参考記事:「妊婦の生活リズムが胎児の成長にとって大切な理由」

フィラデルフィア小児病院のアラン・フレーク氏らの研究チーム。新たな人工子宮を開発し、ヒツジで実験を行った。(PHOTOGRAPHED BY ED CUNICELLI)
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「人工胎盤の本質は、子宮の環境を一定期間再現し、生まれた後に外の世界で生きられるように胎児の器官を発達させることです」とミチャリスカ氏。

 人の赤ちゃんの場合、その状態に達するのが約28週だ。この頃になると、肺が空気を呼吸できるまで成長する。もし赤ちゃんが人工子宮に入ったとしたら、機器による感染や血栓の危険を減らすため、ほとんどの場合はこの段階で外に出されることになるだろう。(参考記事:「再生肺移植、ラット実験で初成功」

 普及するのがどちらのシステムであれ、こうした人工子宮は近いうちに実用化されるだろうと、ミチャリスカ氏、フレーク氏は共に自信を見せている。

 だが人間の赤ちゃんで試す前に、新たな装置でさらなる動物実験を成功させ、人での試験が安全だと実証しなければならない。また、人間の赤ちゃんは今回使われた子ヒツジの半分以下の大きさであり、この点でも調節が必要だ。どちらの研究チームも、3~5年後にはそうした試験の準備が整うだろうと話している。

文=Erika Engelhaupt/訳=高野夏美

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