土星の衛星エンケラドスに生命はぐくむ素材

水素分子を確認、氷の下の海に熱水噴出孔の可能性高まる

2017.04.14
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エンケラドスの海の味

 エンケラドスの軌道のふらつきから、この衛星の中心部と外側の氷の殻が互いにわずかにすべっていることがわかる。この現象をうまく説明するには、氷の下の全体が海になっていて、その深さが26km以上あると考えればよい。2005年にカッシーニがエンケラドスのプルームを発見して以来、この海に生命が存在できる可能性を示す証拠が次々に発見されている。(参考記事:「土星の衛星エンケラドス、氷の下に全球を覆う海」

 カッシーニの画像チームを率いるキャロリン・ポルコ氏は、「地球を除けば、現時点でエンケラドスより条件の良い『海の世界』はありません」と言う。「おまけに、エンケラドスの海のサンプルを採取するのは非常に簡単です。海の方から宇宙に飛び出してくれるのですから!」

 2015年10月28日にカッシーニがプルームの中をくぐったときには、これまでで最も深いところまでダイブし、エンケラドスからわずか48kmのところを秒速8.5kmの相対速度で飛行した。

 それ以前の接近通過から、プルームに含まれる水分子がカッシーニの観測装置の内壁に衝突すると、その衝撃で水素分子が生成するため、プルーム自体に水素分子が含まれているかどうかの判定は非常に難しいことがわかっていた。

 そこで研究者たちは、カッシーニの舌に相当する分光器を数年がかりで微調整して、入ってきた粒子が内壁に接触しないようにしたが、この変更によりカッシーニの「味覚」の感度は数百分の1に低下してしまった。

 ウェイト氏は、「信号を1つも検出できないのではないかと心配していました」と言う。しかし、カッシーニが猛然と降下する間に、水素ガス濃度は背景レベルの100倍以上まで増加した。やはり水素分子はエンケラドスから出ていたのだ。

 研究チームは、この水素ガスはエンケラドスが形成されたときに内部に取り込まれたものではないと考えている。エンケラドスの重力は弱く、水素ガスは非常に軽いため、誕生当時の水素ガスはとっくの昔に失われているはずであるからだ。

 このほど科学誌『サイエンス』に発表された論文では、この水素ガスは作られたばかりのもので、おそらく熱水噴出孔の周囲の活動によって生成したものとしている。

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