【動画】傷ついた仲間をアリが救助、巣が1.3倍に

「救助行動」はどのように進化してきたか、アフリカのマタベレアリ

2017.04.17
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 対して、戦場からこれらのアリを運び出せば生き延びられるし、巣に戻れば邪魔なシロアリをはぎ取ることもできる。

 たとえ複数の肢を失っても、アリは1日もあれば回復してしまう。驚くことに、救出されたほぼすべての個体が再び奇襲攻撃に参加している。

 ほかの種のアリでも、命を落としそうな仲間を助けることはあるが、フランク氏らが観察した行動はマタベレアリに特有のものだ。なぜなら、すぐに助けなければ死ぬわけではない仲間まで救出しているからだ。

「これは行動進化の素晴らしい一例です。ある個体がなぜその行動をするのかを知る必要はありません」(参考記事:「ぐるぐると渦を巻くアリの群れに出会った」

待ち受ける危機
アリの頭上から忍び寄るクモ。シロアリにしがみ付かれたマタベレアリは動きが遅くなり、クモの餌食になる危険が高まる。(PHOTOGRAPH BY ERIK T. FRANK)
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親切心からではありません

 アリたちは仲間に共感していると考えたくなるかもしれないが、それは違うとフランク氏は断言する。「アリたちは親切心から傷ついた兵隊アリを助けているのではありません」

 事実、負傷した個体の大顎から分泌される化学物質を健康な個体に付けてみると、救助行動を誘発するフェロモンであることがわかった。つまり、救助行動を取ったアリたちは、仲間が負傷していることにすら気付いていない可能性がある。(参考記事:「グンタイアリはほんのり鰹だしの香り」

 米コロラド大学ボルダー校でアリの行動を研究する生物学者のヘレン・マクリーリー氏は、この研究結果に驚いている。負傷したアリがコロニー全体にとって大きな価値があるとは思ってもみなかったためだ。(参考記事:「アリが「公衆トイレ」を持つと判明」

 しかし、「傷付いた仲間を救出する行動は、コロニーの規模と力を保つのに役立つようです」とマクリーリー氏は言う。

「救助された個体の寿命が延びるのはもちろんですが、進化という文脈において何より重要な点は、コロニー全体の助けになることです」

 つまり、すべてのアリが勝者になるということだ(ただしシロアリとクモを除く)。

文=Jason Bittel/訳=米井香織

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