ネアンデルタール人のパーティー幹事がいたら、こう助言したい。1頭のマンモスの肉があれば25人を1カ月間もてなせるが、1人のヒトの肉を25人に分けたら1日に必要なカロリーの3分の1にしかならない。パーティーを開くなら、ディナーではなくランチにするべきだ。
人肉の栄養価は、旧石器時代の人々が食べていたほかの動物と比較して高くないことが研究で明らかになり、4月6日付け『サイエンティフィック・リポーツ』誌に発表された。「ほかの動物に比べて、ヒトは栄養学的に優れた食品ではありません」と、論文著者である英ブライトン大学のジェームズ・コール氏は語る。
コール氏の推定値によると、イノシシやビーバーの筋肉は1kgあたり4000カロリーあるが、現代人の筋肉は1300カロリーしかないという。
食品としてそれほど優れていないなら、初期人類はなぜ人肉を食べたのだろう? 病気だったり死にかけたりしているのでないかぎり、人間を狩るのはそれほど容易ではない。「人間を狩るためには、グループを組織して追跡しなければなりません。相手の方も、槍で突き殺されるのを黙って待っているわけではありません」とコール氏。
コール氏は、初期人類が人肉を食べたのは、単に空腹を満たすためではなかったのだろうと考えている。初期人類とその祖先にとって、人肉を食べる行為には、さまざまな社会的意味があった可能性がある。(参考記事:「人は人を食べたのか、4つの事例を読み解く」)

人肉と動物の栄養価を比べる
旧石器時代に食べられていた動物に比べ、ヒトは栄養価があまり高くないことがわかった。
体重(kg)
筋肉の割合(%)
筋肉1kgあたりのカロリー
ヒト
4000
0
魚
1.25 kg
80%
鳥
1.25
80%
ウサギ
6
60%
ビーバー
20
60%
ヒトは筋肉の割合が低く、栄養価が低い。
ヒト
66 kg
筋肉の割合 38%
シカ
160
60%
イノシシ
140
60%
ケブカサイ
1200
60%
ウマ
290
60%
マンモス
3000
60%
体重はおよその平均値(MONICA SERRANO, NG STAFF SOURCES:JAMES COLE, SCIENTIFIC REPORTS (APRIL 2017))