古代イスラエル、ソロモン王の銅山の証拠発見か

栄華極めた聖書の王、長距離交易の痕跡も、動物の糞を分析

2017.04.06
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 1997年に、レビ氏は数カ年計画でヨルダン南部にあるヒルバト・アッナハスを発掘し始めた。グリック氏が古代の銅採掘の中心地だったと考えていた場所だ。レビ氏のチームは銅の精錬時に出たゴミの層を6メートル以上掘り下げて、ようやくその下の手つかずの土壌へたどり着いた。つまり、この場所で大規模な銅の生産が行われていたことを示している。「我々の発掘調査は、グリック氏による見解の多くを裏付けています」と、レビ氏は2006年に書いている。

 グリック氏自身が1934年に発見し、「奴隷の丘」と名付けたティムナ渓谷での最新の発見も、やはりグリック氏に軍配を上げることになりそうだ。ここでの採鉱事業は、今のところソロモン王と関連付けられてはいないが、ここにかつて複雑な社会が存在していたことを示唆している。おそらく、古代イスラエル王国と敵対関係にあったエドム人のものである可能性が最も高い。

人里離れたヨルダンのこの場所では、銅の原石を簡単に手にすることができる。考古学者のトーマス・レビ氏は、ここで古代の採掘場跡を発掘した。(PHOTOGRAPH BY KENNETH GARRETT, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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 ダビデ王がイスラエル軍を率いて砂漠へ入り、エドム人と戦ったという聖書の記述の正確性は、長年の間論争の的となってきたが、ベン・ヨセフ氏は、精錬場を取り囲む要塞壁は、その場所が戦いの標的になっていたことを示しているという。

 聖書がいうように、ダビデ王が実際にエドム人を服従させたのであれば、王は貢ぎ物を要求することができたはずだと、ベン・ヨセフ氏はいう。「エルサレムがこれらの採鉱事業に課税して、そこから富を得ていた可能性は非常に高いです」(参考記事:「貴重な指輪、聖書時代の財宝」

長距離交易の証拠

 ベン・ヨセフ氏の発掘チームが見つけた糞には、植物の種や花粉の胞子がほぼそのまま含まれていたため、動物が何を食べていたのかも知ることができた。そして、ここからも驚きの発見があった。動物が食べたものは、糞が発見された場所から160キロ以上北上した、地中海の沿岸近くから運ばれたものだったのだ。エルサレムまではおよそ300キロで、古代世界であればロバの足で2週間かかる距離だ。

 人里から遠く離れ、周囲を不毛の砂漠地帯に囲まれているこの採掘場では、長距離交易は生存のために欠かせなかった。一番近い水源でさえ、20キロも離れている。必要物資は全てロバに運ばせていた。困難は多く、金もかかる。

「当時の金属は、現代でいえば原油のように必要不可欠なものでした。ですから、砂漠の真ん中での事業へそれだけの投資をする価値はあったのです」と、ベン・ヨセフ氏は言う。

 奴隷の丘からは、鉱物を精錬した後の残留物が1000トン以上も見つかっている。これは、古代の都市か王国ひとつ分の産業規模に相当する生産が行われていたことを示唆している。イスラエル人かエドム人の文明が紀元前10世紀にそこまで発達していたかどうかはまだ議論の対象ではあるが、ベン・ヨセフ氏は今回の発見に期待を寄せている。この発見は、「Journal of Archaeological Science: Reports」2017年2月号に発表された。

「つい最近まで、その頃の遺物はこの地域でほとんど発見されていませんでした。それが今では、ここが銅の産地になっていたことがわかっただけでなく、ダビデ王とソロモン王の時代のものであることまで明らかになってきました」

文=Michelle Z. Donahue/訳=ルーバー荒井ハンナ

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