闇に紛れる
ネコ科動物のメラニズムで有名なのは、アジアやアフリカのクロヒョウと南米のクロジャガーだが、どちらもふつうのヒョウやジャガーの突然変異で、それぞれ種としては同じである。(参考記事:「クロヒョウ、米で猛獣大脱走」)
エイジリク氏らは、ネコ科の遺伝子を調べて、メラニズムの原因となる8つの突然変異を発見したが、これらはどれも独立に進化してきたようだ(ちなみにピューマにはメラニズムを引き起こす遺伝子がない)。(参考記事:「超レアな黒いフラミンゴ、キプロス島で見つかる」)
だが、なぜネコ科の動物でメラニズムが進化したのかはなかなか難しい問題だ。
マレー半島のうっそうとした熱帯雨林ではクロヒョウが非常に多く、中央アジアの砂漠ではほとんど見られないことを考えると、黒い毛皮は、薄暗いところで狩りをする際にカムフラージュになるのかもしれない。
日差しの強い地域では、黒い毛皮に包まれていると体温が上がりすぎてしまうため、メラニズムの個体が生き残るのは難しそうだ。
メラニズムのサーバルがケニアで見つかった理由は不明だが、エイジリク氏は、サーバルは日中は休んでいて夜に狩りをするので問題ないのだろうと考えている。
サーバルは“ネコ科のフクロウ”
小型ネコ科動物の専門家で、テキサスに本部がある動物保護団体「グローバル・ワイルドライフ・コンサベーション」のジム・サンダーソン氏によると、サーバルは“ネコ科のフクロウ”とも呼ばれる夜行性のハンターで、その特大の耳を駆使して、背の高い草の下に隠れたネズミを探し出せるという。(参考記事:「【動画】夜に希少な黒いたてがみのライオンが大接近!」)
また、とても高く跳びあがり、獲物のネズミが反応する前に、長い前脚と鋭い爪で捕らえることができる。サーバルはサハラ以南のアフリカ全域に生息していて、絶滅の心配はないと考えられている。ただ、夜行性なのでサファリツアーで目撃されることはめったにない。
その点で、ピタミッツ氏は二重に幸運だった。「ふつうのサーバルでもめずらしいのに、真っ黒なサーバルに出会えたのですから、私たちはありえないほどラッキーでした」