中国の人気動物といえばジャイアントパンダだが、雲南省の山中で新たに撮影された動画を見れば、きわめて珍しいこのネコに心を奪われてしまうかもしれない。その動物とは、マーブルキャットだ。(参考記事:「パンダを野生の森へ、中国の取り組み」)
撮影された場所は、雲南省の高黎貢山国家自然保護区。複数の自動撮影カメラが、少なくとも1匹のマーブルキャットの姿をとらえた。大きさはイエネコと同じくらいで、あたりを興味深げに見回したり、山道をトコトコと駆けたり、さらにはオシッコ(排尿)をしたりしている。
「マーブルキャットの動画はこれだけではありませんが、それでもすごく興奮します」と、自然保護団体「グローバル・ワイルドライフ・コンサベーション」でネコ科動物を専門とするジム・サンダーソン氏は語る。
同氏が興奮するのも無理はない。東南アジアを中心に生息するマーブルキャットは、その生態がほぼ謎に包まれている。これまでにわかっている知見といえば、タイにいた1匹の雌についての研究くらいなのである。(参考記事:「音声学者がネコ語の研究を本格始動」)
謎多きネコ
今回撮影された動画を見ると、見事な模様のマーブルキャットが、フサフサとした長い尾を、常に後ろにまっすぐに伸ばしていることがわかる。これは、彼らが樹上で尾を利用してバランスを保っているという理論を裏付けるものだ。サンダーソン氏によると、頻繁に木を登り降りするネコは、尾を背中や頭の上にだらりと下げるのではなく、まっすぐに後ろに伸ばしている必要があるという。
マーブルキャットは、足を後ろ向きに回すことができるため、樹上でより俊敏に動ける。マーブルキャット以外でこのスキルを持っているネコ科の動物は、同じく樹上で暮らす南米のマーゲイだけだ。そしてマーゲイもまた、マーブルキャットと同じく長い尾を持っている。(参考記事:「密林のネコ「マーゲイ」、サルの声をまねて狩り」)
マーブルキャットが何を食べているのかは「まったくわからない」そうだが、サンダーソン氏は、彼らは樹上での生活スタイルを生かして、コウモリを食べているのではないかと推測している。
また動画からは、他のネコ科動物と似ている点も見えてくる。「動画には、ほかのネコ科動物と同じように、雄のマーブルキャットがあたりの草に尿をかけて、なわばりを主張している様子が映っています」
絶滅の恐れ
動画から日常の様子を垣間見ることはできるが、「マーブルキャットについての知識は少なく、また生存が脅かされる状況にあるのかどうかもよくわかっていません」とサンダーソン氏は言う。
国際自然保護連合(IUCN)は、農業やヤシ油のプランテーションによる森林の減少により、マーブルキャットの数は減っていると考えている。
見つけるのが非常に困難なことから、マーブルキャットの生息数はわかっていないが、ごく簡単な調査データからは、おそらく1万匹以上はいるのでないかと推測される。
生息域は広く、ボルネオ島からブータンまで、約5000平方キロにおよぶ。生息密度にはばらつきがあるため、IUCNは同種を全体として「近危急種(Near Threatened)」に指定している。しかし保全状況は地域によって異なり、たとえば中国ではより絶滅に近いと考えられている。(参考記事:「【動画】七面鳥の集団がネコの周りをぐるぐる」)