バイキング、その恐るべき戦法と強さの秘密

なぜ欧州は震えあがったのか、ベルセルクは実在したのか

2017.03.10
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 その結果バイキングは、自分の身が危うくなっても同胞が助けてくれると信じて戦いに臨めた。「船の乗組員は村単位で出されるので、友人や顔なじみの人間たちと一緒に行動します」とニコルソン氏。そしてバイキングの信仰では、戦死者は神の殿堂であるバルハラに入ることを約束され、そこでは仲間たちと宴を開きつつ、終末の日に備えてずっと戦い続けることになっている。

ローリスク・ハイリターン

 それゆえ戦場で臆病な振る舞いをすれば、当人の故郷まで悪評がついて回り、恥と破滅を家族にもたらしてしまう。こうした固いつながりが生む仲間内での圧力も、バイキングが戦いのさなかにきびすを返して逃げ出すことを阻んでいた。「もし盾を投げ出して退却したら、そこでおしまいです」とゴロビッチ氏。

 バイキングが自滅的あるいは愚かだったというわけではない。まったく逆だ。バイキングは金のために海を渡った。彼らが好んだ標的は、隔絶された修道院や、守りの薄い教会など、比較的無防備で、ローリスク・ハイリターンの場所だ。騎士道の感覚はなく、目的を達成するためなら待ち伏せや奇襲もよく仕掛けた。

360°バイキング・バトル どの方向からでも見られるバイキングの映像をどうぞ。(説明は英語です)

「彼らは豊かになるために襲撃に出かけたのです」とゴロビッチ氏は言う。「もちろん、生きて帰ることを望んでいました」(参考記事:「バイキング、知られざるその壮大な歴史」

 では、狂戦士(ベルセルクまたはバーサーカー)はどうだろうか。戦闘でのどう猛さゆえ、狂気の同義語にもなっているバイキングの伝説的な戦士たちだ。考古学的には、彼らが実在した証拠は乏しいが、手掛かりがないわけではない。目を見開き、自分の盾に噛み付く異様な戦士の姿をしたチェスの駒がスコットランドで見つかっている。セイウチの牙を彫って作られたものだ。

「剣に生きる者は槍に死ぬ」

 遺物からは、狂戦士はエリートの戦士階級だった可能性が指摘されている。当時早くも戦闘に適応していた社会の注目すべき特徴である。「ベルセルク」はそもそも「熊のシャツ」の意味で、バイキング時代の彫刻にはクマやオオカミの皮をかぶとの上に被った戦士の描写が多くある。(参考記事:「美しくも奇妙なアメリカインディアンの12の肖像」

「彼らはカルト集団か、あるいは兄弟のような固い結束を誇った戦闘集団だったのかもしれません」とニコルソン氏。「飛び抜けて凶暴で、痛みをものともしないという評判でした」

 敵軍が同等の戦力をもっていた場合、バイキングは単純だが効果的な策を常に用意していた。くさび形の隊形を作り、怒号を上げて猪突猛進する「イノシシの鼻」戦法だ。こうして敵の隊列を割り、混乱に乗じて1対1の戦いに持ち込んだ。

 最も一般的な武器は槍だ。投げることもでき、相手の顔やよろいのすき間を刺したりもできる。盾と槍を構えたバイキングは恐ろしい敵だった。(参考記事:「ブーメランは殺人兵器だった、13世紀の骨に痕跡」

「みんな、剣や斧に魅力を感じますが、槍の方がずっと効果的だったのです」とニコルソン氏は言う。ヨーロッパには「剣に生きる者は剣に死ぬ」ということわざがあるが、バイキングの戦いを再現する有志たちの間では、長く鋭い得物をたたえてこう言われているとのことだ。「剣に生きる者は槍に死ぬ」

文=Andrew Curry/訳=高野夏美

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