インドの研究者たちが、そこにいるとわかっていても見逃してしまいそうなほど小さな7種のカエルを新たに発見した。そのうち4種は、チョコレートのお菓子「M&Ms」ほどの大きさしかない。この論文は、2月21日付のオンライン学術誌「PeerJ」に掲載された。
一般に「ナイトフロッグ」と総称されるこれらのカエルは、西ガーツ山脈だけに生息している。インド西部を南北に走る、生き物の豊富な山脈だ。(参考記事:「新種の“踊るカエル”14種、インド」)
これまでに知られていたナイトフロッグは28種だった。その半分以上が、過去5年間で新種と判明した種だ。(参考記事:「【動画】カエルの交尾に「7番目の体位」発見」)
インド、デリー大学の博士課程学生、ソナリ・ガーグ氏によると、ナイトフロッグ探しは注意を要したという。何しろ、地球上で最小クラスのカエルなのだ。
まず、ナイトフロッグは本当に小さい。今回見つかった新種のうち、最も小さい種は体長12ミリしかない。なお、すでに知られている世界中のカエルの中で(そして、脊椎動物の中で)最小の種はパプアニューギニアにすむ Paedophryne amauens で、体長わずか7.7ミリだ。(参考記事:「最小の脊椎動物、7.7ミリのカエル」)
ゾウに追いかけられた!
加えて、新種のナイトフロッグたちは人目につきにくい生活を送っている。生息地も沼や森林であり、小川を好む近縁種とは異なる。
「鳴き声を発している個体を探し出すのは非常に困難でした。地面を厚く覆う草や落ち葉の下にいつも隠れているからです」とガーグ氏。
「近づきすぎると鳴くのをやめてしまい、ますます探しづらくなってしまいます」
さらに、ガーグ氏ら研究者はカエル以外の現地の野生動物とも思わぬトラブルがあった。
メールで取材に応じたガーグ氏は、「あるカエルの鳴き声を録音することに夢中になるあまり、近くでゾウが2度鳴いたのを無視していました」と明かす。「ついにはゾウに追いかけられ、死に物狂いで逃げるはめになりました。調べていたカエルも、録っていた音声も持たずにです!」(参考記事:「【動画】もう鎖はいらない、ゾウの飼育場に変化」)
無事に戻ってきた研究室で、ガーグ氏らの研究チームは採集した標本のDNA、身体的特徴、鳴き声を分析。新種であることを確認した。
絶滅の淵にいる新種
デリー大学の両生類研究者で、論文の共著者でもあるサティアバマ・ダス・ビジュ氏は、「これらの新種は早急な保護が必要」と訴える。
「この小さなカエルたちは、各調査地点では比較的あちこちにいて、数も豊富でした。しかし、生息地が人間活動によってかなりの悪影響を受けているケースが多いことも分かりました」と、ビジュ氏はメールに記している。(参考記事:「絶滅したカエルを140年ぶりに再発見、卵で子育て」)
西ガーツ山脈では大規模なプランテーションや人の移住が増えており、生息域が限定されている種にとっては壊滅的な打撃になり得る。「わずかな変化でも、ある地域から個体群全体を消滅させてしまうかもしれません」とビジュ氏。(参考記事:「野生動物との共生を模索、インドの農村」)
国際自然保護連合(IUCN)で生物多様性評価部門を率いるニール・コックス氏は、気候変動も西ガーツ山脈における差し迫った問題だと指摘する。
「気温が上がれば上がるほど、カエルは標高の高い場所へと生息地を移す可能性が高くなります。そうした移動の結果がどうなるか、私たちには分かりません」
見つけなければ絶滅にも気づかない
現在、既知の両生類のほぼ3分の1の種が絶滅の危機にある。ガーグ氏やビジュ氏のような専門家が、彼らが姿を消す前に見つけようと急いでいるのもそのためだ。
「過去10年で、驚くべき数の両生類の新種が報告されています」とコックス氏。
2001年から2015年にかけて、科学者たちが報告した両生類の新種は1581種。そのうち159種が西ガーツ山脈で見つかったものだった。この地の多様性は、ブラジルの大西洋岸森林に次ぐ豊かさだ。(参考記事:「「絶滅両生類再発見」の状況」)
「どこにどんな種がいて、どんな風に生きているのか。それが分かれば分かるほど、種を絶滅から守るための資金援助の働きかけに関してできることも多くなります」