死海文書「第12の洞窟」を発見、50年ぶり

数十年前に盗掘されていたものの、科学者には大きな手がかり

2017.02.15
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出回る偽造品

 2000年以上前から残るとされる死海文書には、現存最古のヘブライ語聖書の写本などが含まれている。最初の死海文書は1946年末か1947年初頭、死海の北西岸に位置するヒルベト・クムラン付近の洞窟で、ベドウィンの羊飼いによって発見された。以来、文書はさらに10カ所の洞窟で見つかっている。(参考記事:「死海文書の謎に新説が浮上」

 米ニューヨーク大学のヘブライ語およびユダヤ学教授で死海文書を専門とするローレンス・シフマン氏によれば、15年ほど前から、個人相手の美術品市場に死海文書の紙片が数多く出回るようになったという。「2002年以降に市場に出回った紙片の多くは、おそらく偽造されたものだと思われます」(参考記事:「宇宙考古学で遺跡保護を、TED受賞者が呼びかけ」

 一部の偽造紙片には、本物の文書と同じくらい古い文字が巧みに記されているという。「そうした偽造紙片の中には、洞窟で見つかった何も書かれていない古代の紙片に、文字を書き付けたものもあるでしょう」

洞窟内で発見された壺。巻物が収められていたとみられている。(PHOTOGRAPH BY CASEY L. OLSON AND OREN GUTFELD)
洞窟内で発見された壺。巻物が収められていたとみられている。(PHOTOGRAPH BY CASEY L. OLSON AND OREN GUTFELD)
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 今回、考古学者らが洞窟で発見した白紙の羊皮紙片は、手の込んだ偽造紙片がどのようにして市場に出回るのかを探るヒントになるかもしれない。また、羊皮紙片は科学的に厳密な手法で回収されたため、売りに出される紙片の価値を評価する上でも役立つと思われる。(参考記事:「中世の本にネコの足跡、ネットで話題に」

「商品が市場に出されたときには、その由来を知ることはできず、売り手の証言に頼るしかありません」とプライス氏は言う。「洞窟の発掘調査の管理は、何かが見つかったとき、その出どころと真偽をはっきりさせるために必要なのです」

さらなる大発見の可能性は

 この先、さらに多くの文書が発見される可能性が出てきたことで、すでに大げさな憶測がいくつも飛び交い、ニュースの見出しを飾っている。しかし、小説『ダ・ヴィンチ・コード』の作者ダン・ブラウン氏の次回作の題材になるような発見は期待していないと、シフマン氏は言う。

「東方の三博士の日記が発見されたりはしないでしょうね」とシフマン氏は冗談めかして話す。「新約聖書やタルムード関連の文書(ユダヤ教の律法などを記した文書)の理解に役立つ文書なら、あるいは見つかるかもしれません。しかし衝撃的な文書が発見されて、紀元の変わり目頃の古代宗教についての認識を覆すといった考えは、まるで現実的ではありません」(参考記事:「英語を変えた奇跡の聖書」

洞窟を調査する考古学者のオレン・ガットフェルド氏とアヒアド・オバディア氏。(PHOTOGRAPH BY CASEY L. OLSON AND OREN GUTFELD)
洞窟を調査する考古学者のオレン・ガットフェルド氏とアヒアド・オバディア氏。(PHOTOGRAPH BY CASEY L. OLSON AND OREN GUTFELD)
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 シフマン氏はまた、死海文書は自分たちの正当な文化的遺産の一部だと主張するパレスチナ人からの抗議に、イスラエルが耳を貸すことも同じくらいあり得ないと述べている。

 新たな文書の発見に向けた作業は、パレスチナ人(および国連)が「占領地」と認定しているヨルダン川西岸で行われている。イスラエルは1954年、外国の占領者による「文化的遺物」の発掘と持ち去りを禁止する国連の協定に署名している。(参考記事:「ヨルダン川の『戦争と平和』」

 それでも「イスラエル当局が、聖書やユダヤ文書の中で最も古い写本を誰かに引き渡すことなどあり得ません」とシフマン氏は言う。「実に明快かつ単純なことです。そんなことは起こらないのです」

文=Michelle Z. Donahue/訳=北村京子

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