ロシアの自然保護区100年、厳格さの背景

めったに見られない美しい自然風景17点

2017.01.17
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ロシア北極圏国立公園、フランツ・ヨーゼフ諸島で育つイソギンチャク。(PHOTOGRAPH BY ENRIC SALA)
ロシア北極圏国立公園、フランツ・ヨーゼフ諸島で育つイソギンチャク。(PHOTOGRAPH BY ENRIC SALA)
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厳しすぎて入れない

 ロシアの自然保護区(ザポベドニクは「命令」を意味するロシア語から来ている)は、保護の厳しさでは世界最高レベルだ。国際自然保護連合(IUCN)によれば、この自然保護区は最も高い保護カテゴリー「1a」に属する。「人の立ち入り、使用、影響を及ぼすことが厳しく規制、制限される場所」だ。一方、米国の国立公園は保護と公衆の保養を兼ねているため、IUCNの基準ではもっと下のカテゴリーとなる。(参考記事:「IUCN、世界の優良自然保護区を認定」

 1980年代、ロシアも市民が保養や啓発プログラムを利用できるよう、国立公園の設置を始めた。現在、ロシアには50の国立公園、59の連邦鳥獣保護区、17の連邦自然モニュメントがあり、それぞれ異なるレベルの保護が実施されている。だが、最も厳格なのは自然保護区だ。

 ドンスコイ氏は、自然保護区の制度は100年前のものだが、「本当に前進し始めたのはソ連解体後です」と話す。1992年に比べて、連邦が保護する区域は「95%も増加しました。ほぼ倍増です」とドンスコイ氏。

 今、この制度は大きな課題に直面している。こうした自然を市民がどう支え、楽しみ、保護に貢献すればいいか、ほとんどのロシア人が理解していないのだ。その理由は、長年、一般の人々がこれらの地域から締め出されてきたことにある。

カムチャツカ国立公園のプロスキー・トルバチク火山から流れ出る溶岩。「カムチャツカの火山群」はユネスコの世界遺産でもある。(PHOTOGRAPH BY SERGEY GORSHKOV)
カムチャツカ国立公園のプロスキー・トルバチク火山から流れ出る溶岩。「カムチャツカの火山群」はユネスコの世界遺産でもある。(PHOTOGRAPH BY SERGEY GORSHKOV)
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「米国の公園は『保護と保養』を目的にしていますが」と、WWFロシアのCEO、イゴール・チェスティン氏は言う。「ロシアでは、保護と科学研究が目的です。自然保護区はもともと野外研究室として創設され、立ち入りも制限されて、一般人は入れませんでした」

 今でも、自然保護区に立ち入るには通常、特別な許可がいる。そうまでして訪れる人はまれだ。

「自国を誇りに思う最も大きな理由は?」という世論調査では、多くのロシア人が「自然の豊かさ」と答えるとチェスティン氏は言う。ロシア人は自国の自然が感動的だと知りながら、自分が関わっている実感は乏しいとのことだ。

「我々はみな、ロシアの自然を誇りに思っています」とチェスティン氏。「しかし、ボランティアその他の取り組みを通して自然のためになる活動を実際に行っている人は、わずか1%しかいません」(参考記事:「極北の野生動物の聖域、ウランゲリ島」

【フォトギャラリー】ロシア極北の孤島、ウランゲリ島の動物たち

市民の参加に向けて

「環境と自然保護区の年」の目的の1つが、この状況を変えることだ。ロシア政府は、自然保護区よりもアクセスが容易な国立公園を一般市民がもっと訪れるよう努めたいと考えている。

 また、自然保護区や国立公園といった保護区域の制度も拡充する計画だ。昨年8月、ロシア政府は既存のロシア北極圏国立公園を広げ、豊かな生物多様性を誇る極寒の地、フランツ・ヨーゼフ諸島も含めることを決めた。

 ナショナル ジオグラフィック協会付きエクスプローラーで「原始の海」プロジェクトを立ち上げたエンリック・サラ氏は、「フランツ・ヨーゼフ諸島は世界最北の群島で、セイウチ、ホッキョクグマ、ホッキョククジラのすみかです」と話す。「1800年代にようやく発見された、歴史的には奇跡のような場所なのです」(参考記事:「ロシア極北の大自然 フランツ・ヨーゼフ諸島」

日が沈むころ、空中に跳び上がるホッキョクギツネ。ウランゲリ島自然保護区にて。(PHOTOGRAPH BY SERGEY GORSHKOV)
日が沈むころ、空中に跳び上がるホッキョクギツネ。ウランゲリ島自然保護区にて。(PHOTOGRAPH BY SERGEY GORSHKOV)
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 環境問題でロシアがリーダーシップを発揮しているもう1つの例として、サラ氏は近年行われた南極のロス海の保護を挙げる。米国、EUなど多くの国々と協力して実施された。いずれもサラ氏にとっては、最初の自然保護区創設から100周年となるこの年に明るい見通しを抱ける材料だ。広大な自分たちの国にある「この惑星で有数の素晴らしい場所」を守るため、ロシアは努力を続けていくだろう、と。

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