トウワタの毒性に関する2つの研究はいずれも実験室で行われたため、カルデノリド濃度の変化がオオカバマダラにどう影響するか、科学者たちもまだ正確にはわかっていないとオーバーハウザー氏は言う。それでもファルディン氏は、地域に固有のトウワタ種を探して植えるよう勧めている。それが地域の環境に最も適しており、猛毒と化す可能性が低いと考えられるからだ。

移動距離が長くなり翅が大型化?

 気候変動はトウワタを介してオオカバマダラに影響を及ぼすだけではない。もっと直接的に彼らの形まで変えてしまう。

 米カリフォルニア大学デービス校で生態学と進化を研究する博士課程学生、マイカ・フリードマン氏は、2017年に米国各地の博物館を訪ね、そのコレクションを調査した。ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーとして支援も受け、1870年代までさかのぼってオオカバマダラ数千匹の大きさを測定した。(参考記事:「色覚のない敵に「派手さで警告」は通用するか?」

 オオカバマダラの大きさはさまざまで、翅を広げた幅は約8.9センチから約12.2センチだった。そのため、測定結果をコンピューターで分析し始めるまで気づかなかったが、翅の大きさは過去150年の間に4.9%、わずかながらも着実に大きくなっていた。「初めは自分でも信じられませんでした」とフリードマン氏は振り返る。

【動画】オオカバマダラの大群が毎年やって来る越冬地
メキシコにある保護区では、冬にオオカバマダラの大集団が圧倒的な光景を作り出す(解説は英語です)

 フリードマン氏の研究結果は今月、学術誌「アニマル・マイグレーション」で発表されたが、なぜ翅が大きくなっているのか突き止めることはできなかった。しかし、理由の1つは気候変動ではないかと彼は考えている。気温の上昇で春と夏の繁殖地がさらに北に押し上げられている可能性があり、ゆえに秋にメキシコへ戻る距離は長くなる。「オオカバマダラの大きさは渡りの距離に対応していることがわかっています」とフリードマン氏。「したがって翅が大きく、長くなれば、小さな個体よりもずっと有利になります」(参考記事:「羊や鹿の大移動、本能ではなく「文化」だった」

 個体数の減少は止まらず、オオカバマダラの絶滅の可能性は一層高まっている。米国地質調査所(USGS)はオーバーハウザー氏らオオカバマダラの専門家たちに、このチョウが回復不可能な水準まで減少する確率を究明するよう依頼。研究者たちが出した予測は、今後20年間でオオカバマダラが回復不可能なほど減少する確率は11~57%というものだった。「このリスクを半減させるには、オオカバマダラの個体数が500万匹以上増えなければならないということです」と、研究者のひとり、ブライス・シーメンス氏は話す。

「個体数が変化するプロセスは、止められないものではありません。来年何が起こるかは予測できないのです」とシーメンス氏。

 USGSから依頼を受けたグループによる追跡調査で、オオカバマダラの個体数減少につながった要因の上位3つは、米国中西部北部における生息地の喪失、春と晩夏の高温であることが明らかになった。テイラー氏は、オオカバマダラの激減に歯止めをかけるためには10億本以上のトウワタが必要だと推定している。

「私たちには、オオカバマダラもほかの種も救う力があります」とテイラー氏は言う。「問題は、それを実行する意志があるかどうかです」

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