モランディ氏は人付き合いを嫌う半面、海岸の保護に熱心に取り組み、夏にやってくる観光客に対しては、島の生態系について、またそれらをどのように保護すべきかについて話して聞かせる。

「私は植物学者でも生物学者でもありません」と、モランディ氏は言う。「植物や動物の名前は知っていますが、私の仕事はそれとは大きく異なります。植物の世話というのは、技術的な作業です。植物がなぜ生きなければならないのかを、人々に理解してもらおうとしているのです」

 モランディ氏は、この世界を搾取から守るためには細かい科学の知識よりも、人々に美しいもののとらえ方を教えることの方が効果的であると考えている。「美しさをただ見るのではなく、目を閉じて感じることが大切だと、人々に知ってもらいたいです」

 冬のブデッリ島は、ことさら美しい。モランディ氏は、20日間以上人と全く接しないこともある。そんな時、自分自身を静かに見つめていると、心に慰めがもたらされる。しばしば、風と波が奏でる音楽以外、静けさを破るものが何もないなか、浜にじっと座り込むこともある。

「刑務所にいるようなものです。でも、自分で選んだ刑務所です」(参考記事:「27年一度も人と接触せず、ある森の「隠者」の真相」

真の孤独が創造性を育む

 モランディ氏は、創作活動をして時間を過ごす。ネズの木を拾ってきては、表面の模様のなかに隠れた顔を探し出し、彫刻作品を作る。ギリシャの哲学者や文学者の著作物を読み漁り、瞑想する。島の写真を撮り、時間ごと、また季節ごとに変化する景色を楽しむ。

モランディ氏は、ネズの倒木を拾い集めて彫刻作品を作る。それを観光客に売って得た収入を、アフリカからチベットまで、様々な国の非政府団体へ寄付している。島のごくわずかな土地の中だけで生活しているが、モランディ氏は世界の広さをしみじみと感じるという。(Photograph by Michele Ardu)
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 極端に長い期間をひとりで過ごす人として、モランディ氏の生き方は珍しいものではない。孤独が創造性を生むとは、かなり以前から言われてきたことだ。昔から、数多くの芸術家、詩人、哲学者が、社会から隔絶されたところで偉大な作品を生み出してきた。(参考記事:「森の教えにしたがい暮らす、小さな生活共同体 写真14点」

 だが、誰もが孤独の恩恵を受けるわけではない。「技術が進歩した社会に暮らし、ひとりでいるのはよくないと信じ込まされてきた人々にとって、孤独はストレスになることもあります」。『Loneliness: A Sourcebook of Current Theory, Research and Therapy』の中で、心理学者ピート・スードフェルド氏はそう語る。その一方で、世界にはまだ孤独な生活が崇高な伝統として受け継がれている文化も存在する。

 ブデッリ島の周辺で開発が進み、島にWi-Fiが引かれたとき、モランディ氏と彼の愛するパラダイスはソーシャルメディアを通して外の世界とつながった。この新しいコミュニケーションの形を、モランディ氏はより大きな目的を達成するために受け入れることにした。その目的とは、人々にブデッリ島の美しさを知ってもらい、人と自然を結び付ける手助けをすることだ。その結び付きから、衰え行く地球を大切にしようという気持ちが生まれればと、モランディ氏は期待している。(参考記事:「ロビンソン・クルーソー「実在神話」の真相」

「愛とは美しさの絶対的な結果であり、美しさもまた、愛の絶対的な結果なのです」と、モランディ氏は語った。「誰かを深く愛すると、その人を美しいと思うようになるでしょう。肉体的に美しいのではなく、その人と共感し、その人の一部になる。そしてその人も自分の一部になる。自然との関係もまた同じです」

日没の空を背にしたモランディ氏の影。世界中が静けさに包まれたかのようなこの時間が、一日で最も好きだという。「私たちは超人で、神のような存在であると思い込みがちですが、私にしてみれば人間とは何ものでもありません。私たちは自然に適応すべきなのです」(Photograph by Michele Ardu)
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【写真をもっと見る】ギャラリー:31年間たった1人で彼が孤島に暮らし続けた理由と幸福 残り8点

この記事は2017年11月17日に公開した「28年間たった1人で彼が孤島に暮らし続けた理由」を改題し、一部修正したものです。

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文=Gulnaz Khan/写真=Michele Ardu/訳=ルーバー荒井ハンナ