しかし、ここ2、3年は、ケプラーはいつ駄目になってもおかしくなかった。探査機の燃料が近いうちに尽きることを、ミッションの責任者たちはわかっていた。燃料タンクを補充する方法はなく、2週間前にケプラーは観測活動を停止。科学者チームは最後のデータを回収しようと駆け付けた。(参考記事:「修復不能のケプラー、成果はこれから」「NASAのケプラー衛星、複数の地球型惑星を発見」)
「私たちは可能な限りあらゆる科学データを収集し、すべて安全に休止させました」と、NASAエイムズ研究センターのチャーリー・ソーベック氏は話している。「最終的には、これ以上何かできるための燃料はいっさい残っていない状態でした」
膨大なデータから何を読み解く?
ケプラーはもう新しいデータを地球に送ることはできないが、その情報の宝庫はこれから発掘を待っている状態だ。ケプラーの最初の観測領域と、その後のK2ミッションで得られたデータは9年分余り。初めて行われた大規模な惑星の統計調査を受けて、これから科学者たちがデータの分析に着手し、解明を試みる。(参考記事:「ケプラー、新たに219個の惑星を発見」)
その科学者の1人が、米ハワイ大学のローレン・ワイス氏だ。ワイス氏は、ケプラーが観測した100個の恒星に関し、周回する惑星を調べるプロジェクトに着手している。それらの質量と軌道、惑星系全体の構造、そして惑星がどうやって今の場所に至ったのかを測定するというものだ。
「これは、私たちの太陽系が全体としてありふれているのか、珍しいのかを解明する唯一の方法です」とワイス氏。
塵(ちり)が渦を巻くタランチュラ星雲内部の空洞を、生まれたばかりの輝く星々が照らす。(NASA; ESA; F. PARESCE, INAF-IASF, BOLOGNA, ITALY; R. O’CONNELL, UNIVERSITY OF VIRGINIA; WIDE FIELD CAMERA 3 SCIENCE OVERSIGHT COMMITTEE)
生命のいる惑星探しは続く
太陽系が数十億のうちの1つだとわかった今、はるか遠くの惑星を具体的に知る時だと科学者たちは言う。単なる統計的な意味ではなく、何でできていて、どんな歴史があるのか突き止めるということだ。
「地球サイズの惑星がほとんどどこにでもあることを、ケプラーは教えてくれました」と米カリフォルニア大学バークレー校のコートニー・ドレッシング氏は話している。「地球から最も近い隣人を見つけるため、近くの恒星のハビタブルゾーンを探索する段階になりました」
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