太陽系外の惑星探査で屈指の実績を上げてきたNASAのケプラー探査機が役目を終えた。NASAは10月30日、星空を10年近く観測してきたケプラーの燃料が尽きたと発表。今後、ケプラーは地球を追う軌道に留まり、太陽の周囲を回る。故郷の星に161万キロより近づくことは二度とない。
「NASAオリジナルの惑星探査機、ケプラー宇宙望遠鏡は燃料を使い果たしました」。NASAの天体物理学部門ディレクター、ポール・ハーツ氏は記者会見でこう述べた。「予期しなかったことではありません。これにより、ケプラーの探査機としての運用とデータ収集は終わりを告げます」
ケプラーは、宇宙に対する私たちの理解に革命をもたらしたと言っても過言ではない。太陽系の外にある恒星にはたいていその周囲を回る惑星(系外惑星)があること、そのうちおよそ5分の1が地球に似た大きさや軌道をもつことが判明した。言い換えれば、惑星は恒星が形成されるときのよくある産物であり、けっして珍しいものではないことを、ケプラーは私たちに教えてくれた。
米ワシントン大学のビクトリア・メドーズ氏は、「ケプラーのおかげで、他の恒星のハビタブルゾーン(生命が存在しうるエリア)を周回する惑星が豊富にあることがわかっています」と話す。「系外惑星科学の未来は大きく開かれています」(参考記事:「【解説】宇宙生命探査、次はこうなる」)
このあと天文学者たちは忙しくなる。ケプラーが収集した山のようなデータをふるいにかけ、理解し、新たなミッションを構想し、新しい装置を設計する必要があるからだ。そして次世代の系外惑星探査機を使い、科学者たちは空に隠された惑星の特徴を明らかにする仕事に力を注ぐことになる。
何しろ、天文学の採石場とも呼べるこの分野で、「生命の兆候を持つ惑星が地球以外にあるのか」という最大の謎はまだ残されたままだ。
「こうした系外惑星が何でできているのか、これから描き出していきます。惑星内部から大気まで、これまでにないレベルで詳しく示せるでしょう」と話すのは、米カリフォルニア工科大学のジェシー・クリスチャンセン氏だ。「ケプラーは、惑星と惑星系の多様性を覆っていたベールを外してくれました。今から本当の探究が始まります」
絶えず観測を続けた9年間
2009年に打ち上げられたケプラーは、4年にわたって北の空の同じ範囲を観測し続け、別の星が前を横切るときに明るさが短期間減少する現象を追った。ケプラーはその視野から2300もの系外惑星を確認し、こうした天体が一般的であり、孤独な星はめったにないこと、そして、宇宙に散らばる惑星が途方もなく多様であることを明らかにした。
ところが、ケプラーは2013年、観測領域を絶え間なく見つめ続けるのに必要な装置の故障に見舞われる。しかし停止はせずに新たなミッション「K2ミッション」を立ち上げ、姿勢を変えながら観測を続けた。
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