秋を迎えた今、北半球のあらゆる場所でリスたちが忙しく動き回っている。冬を前に体を太らせ、長くふさふさの毛をまとうためだ。だが、彼ら働き者の齧歯類(げっしるい)は、餌をただ腹に詰め込んでいるだけではない。

 実際に活動しているリスは、公園や裏庭に足を踏み入れればたいてい見ることができる。しかし、彼らの社会構造、記憶、批判的思考の能力はそう単純ではない。というのも、リスはオーストラリアを除いて、生き物が住める地域なら世界中のほとんどどこにでもいるからだ。現在、リス科の動物は287種いることがわかっている。(参考記事:「米で急増のリス、投薬で産児制限」

 リスは単独行動を取り、普通はおとなしく(ニューヨーク市の公園で5人を攻撃した個体のようなケースを除けば)、バラエティーに富んだ仕草で人を魅きつける。以下、広く見られる行動について理由を探った。一読したら、冒頭の映像でその動きを確かめてみてほしい。(参考記事:「動物大図鑑 リス」

巧みなナッツ仕分け術

 冬に備えるため、リスは「キャッシング」(餌の貯蔵)と呼ばれる行為に多くの時間を費やす。

「餌を貯め込むところを見たいなら、今がちょうどいい頃です」と話すのは、カナダ、ヨーク大学の教授で、採餌を促す認知機能を研究しているスザンヌ・マクドナルド氏だ。同氏はチーターやゾウのような動物を主に研究しているが、アライグマやリスなど、都市にすむ「隣人」にも強い関心がある。楽とは言えない冬を越すため、リスたちにとって秋は忙しい時期だとマクドナルド氏は説明する。

「食べ物を集め、駆け回り、一心不乱に穴を掘る様子が見られるはずです」とマクドナルド氏。

 この貯蔵行動は、見た目ほど行き当たりばったりではない。科学誌「Royal Society Open Science」に最近掲載されたある研究は、リスが木の実を入念に分類していることを明らかにしている。

 米カリフォルニア大学バークレー校の研究者らが、北米の東側で見られるトウブキツネリスを観察したところ、貯蔵する木の実を質と種類によって整理していることが判明。さらに、分類には好みが関わっている可能性があることまでわかった。研究者たちは、こうした調整を「チャンキング」(仕分け)と呼んでいる。

 論文の著者であるルシア・ジェイコブス氏は同大学のプレスリリースで、「リスは人が食料品をしまうのと同じように餌を仕分けしているのかもしれません」と話している。「果物をある棚に入れ、野菜は別の棚に入れるとします。そのあとタマネギが必要になれば、1つの棚だけを見ればいいのです。台所の棚を全て探す必要はありません」

ジグザグ走りで敵から逃げる

 ドッジボールをよける子どものように、リスは前後に素早く動いて捕食者を混乱させる。ある実験でリスのレプリカ人形を置き、人形の上や周囲に餌を置いておくと、リスは恐る恐る近付いてきた。「食べ物に引かれているのは間違いありません」とマクドナルド氏は指摘するが、リスは警戒心が強い。自然界に天敵が多いためだ。

 好奇心を抱き、他の個体との関係も心配しつつ(この点は人間と共通だ)、リスは興味を引く物や、餌にありつけそうな物に近づく。同時に、周囲の状況を鋭敏に感じ取っている。食物連鎖の底辺近くで生きているからだ。マクドナルド氏はこう話す。「あらゆる生き物に食べられてしまう可能性がある以上、用心深くなければならないのです」

 捕食者に出くわせば、リスは左右に素早く方向を変えながら逃げ、安全そうな木を見つけるまで走る。木の上に登れば一安心だ。

 残念ながら、これが車にひかれるリスが多い理由でもある。車の急な発進に気付いて警戒モードになったリスは、道路を横断しようとして、車線で前後のジグザグ移動を始める。そうすると、交通事故で致命傷を負いやすくなってしまうのだ。

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