ハゲワシの恩恵

 微生物学者のジョーダン氏に気味の悪い思いをさせたのは、絶えず実験用地にいるハゲワシだった。「見上げると、少なくとも15~20羽が木に止まっていました」と、ジョーダン氏は振り返る。

 一方で実験区画の半分は、ハゲワシなど大型の腐肉食動物が入れないよう、フェンスと網で隔てていた。これらの区画では、イノシシの死骸がなくなるのに時間がかかり、ハエの発生もかなり多かった。「ハゲワシは私たちに恩恵を与えています」とバートン氏は言う。ハエの集団は病気を媒介しうるが、ハゲワシがその規模を抑え込んでいるのだ。

 この研究の中間結果は、今年の米国生態学会と、最近刊行された学術誌「エコロジー」で報告されたが、研究は終了には程遠い。土壌中の微生物群集が時間とともにどう変化するかを追うため、ジョーダン氏は今も試料を処理している最中だ。

 トンバーリン氏にとって、この実験はイノシシの駆除がもたらす環境への影響を際立たせる結果となった。イノシシ自体は侵入種であり、甚大な被害を与える。しかし、大がかりな駆除は他の侵入種の拡大を促すかもしれないという矛盾をトンバーリン氏は指摘している。(参考記事:「米で急増するイノシシ、感染症を拡大か」

「侵入種は不安定な環境を好む傾向があります」とトンバーリン氏は説明する。「非常に混沌とした環境を作り出せば、足掛かりとなる機会を彼らに与えているかもしれないのです」(参考記事:「アメリカでアルマジロが生息域を拡大」

「これらの出来事の結果はその場だけで終わらず、まったく予期しないやり方で生態系に次々と変化を起こしていきます」とバートン氏は話す。

 実験開始時のイノシシの死骸3トンは、もうあまり残っていない。だが研究チームは、周囲の森林と区別がつかなくなるまで、実験区画の監視を続ける予定だ。もっとも、永遠にその時が来ない可能性も彼らは指摘している。「今後のキャリアを通じて、測定を続けることになるでしょう」と、ラシュリー氏は見通しを語った。

文=Christie Wilcox/訳=高野夏美