米ルイジアナ州、パルメット州立公園のキャンプ場にいるウリ坊たち。幼いイノシシはかわいらしく見えるかもしれないが、こうした侵入種は生態系に大きな打撃を与えている。(PHOTOGRAPH BY RICHARD NOWITZ, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
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ウジ虫が川のように

 実験開始とほとんど同時に、イノシシの山に降りて来る数十羽のハゲワシが定点観察のカメラに記録された。昆虫を集める粘着性のわなは毎日交換する必要があった。なぜなら「そこに別の虫がくっついたらいけないから」だとバートン氏は言う。死骸にうようよと群がったウジ(ハエの幼虫)は、10センチほどの厚さに積み重なっていた。(参考記事:「ハゲワシ “嫌われ者”の正体」

 もちろんハゲワシやウジの出現は予想通りだったが、研究者たちは自然の反応の大きさに畏怖を覚えた。「起こっている状況に、私たちはまったく準備できていませんでした」とバートン氏。

「こうして活発に分解が進む間に微生物データを集めるのは、『ツイスター』で遊ぶようなものでした」と、ミシシッピ州立大学のヘザー・ジョーダン氏は言う。「転ばないで、イノシシに乗らないように、そこら中にある死蝋(しろう)も踏まないように」。死蝋は脂肪が分解されて作られる。「汚物にどろどろした液体、それから粘液も踏まずに前かがみになって、死体の中にいる菌の群れを採集して。クモと幼虫と、ありとあらゆる気持ち悪いハエが周りにいましたが」

 生物学的反応は非常に極端で、研究チームはサンプル採取方法の一部を断念せざるを得なかった。ラシュリー氏によれば、分解速度を正確に計る予定で計量してあった腐葉土層は「イノシシから出た粘液に浸かってしまい、結果の解釈がかなり難しくなりました」という。地中にすむ昆虫を採取するわなは、ウジが地上に持ち上げてしまい、「ウジの川に流されて丘を下って行きました」

 ハエが発生すると、スズメバチやアノールトカゲといった捕食者がやってきた。「スズメバチがハエを捕らえて防鳥ネットに止まり、そこにとどまって食べるのが見られました」とバートン氏は言う。「今回見た中で、指折りのクールな光景でした」

 やがて死骸が白骨化すると、うごめくウジの川は離れていき、さなぎになるために泥の中に潜っていった。次いで、アルマジロの群れが実験区画にのろのろとやってくると、ウジにありつこうと、土をはがして回った。こうして地面がかき回されると、土は「変な歩き心地」になったとバートン氏は話した。表面の感触が大きく変わったためだ。植物群落も破壊されたので、新しい種がその一帯に根を下ろすようになった。

 1年以上経った今もなお、この地の生態系には傷跡が残っている。「動植物はいつか元に戻るのでしょうか。おそらく、それはないでしょう」とバートン氏。

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