絶滅とされたキノボリカンガルー、90年ぶり再発見

「生きているとわかっただけで素晴らしい」と専門家、ニューギニア島

2018.09.27
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唯一の標本は大英自然史博物館に

 ウォンディウォイキノボリカンガルーは1928年、伝説的な進化生物学者エルンスト・マイヤーによって発見された。発見場所は、広大なニューギニア島の西端に位置する西パプア州のウォンディウォイ半島の山地だ。

 マイヤーはこの個体を射殺し、英国ロンドンの大英自然史博物館に送った。そして1933年、Dendrolagus mayriという学名が付けられた。これがウォンディウォイキノボリカンガルーの唯一の標本だ。(参考記事:「ナショジオ的「大英自然史博物館展」に行ってみた。写真27点」

 以来、この種の存在を示唆する報告すらほとんどなかった。ただし、スミス氏は次のように説明している。「標高1300メートルあたりを境に、うっそうとした竹やぶが始まるため、ハンターたちは足を踏み入れません」。実際、スミス氏らはさらに奥へ進むため、道を切り開かなければならなかった。

 そうして標高1500〜1700メートルくらいまで登ると、キノボリカンガルーが木の幹に残す引っかき傷と排せつ物が目につき始めた。「縄張り行動として残すにおいもありました」

「狭い範囲で驚くほど繁栄している」

 キノボリカンガルーは大きいもので体重15キロほどあるが、林冠の高い位置にほとんど身を隠している。探検も終盤に差し掛かり、スミス氏らは諦めかけていた。

 すると、ハンターが「高さ30メートルの樹上にカンガルーを発見しました」とスミス氏は振り返る。「私は葉っぱの間からチラリと見えるその姿に焦点を合わせ、なんとかまともな写真を数枚撮ることができました」

アマチュア植物学者のマイケル・スミス氏が7月に撮影したウォンディウォイキノボリカンガルーの写真。(PHOTOGRAPH BY MICHAEL SMITH)(参考記事:<u><a href="/atcl/news/17/040400123/" target="_blank">「絶滅と考えられていた犬、半世紀ぶり見つかる」</a></u>)
アマチュア植物学者のマイケル・スミス氏が7月に撮影したウォンディウォイキノボリカンガルーの写真。(PHOTOGRAPH BY MICHAEL SMITH)(参考記事:「絶滅と考えられていた犬、半世紀ぶり見つかる」
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 豪メルボルン大学のティム・フラナリー氏は素晴らしい発見だと評価している。「鮮明な写真ばかりで、独特の毛色がよくわかります」と述べ、ウォンディウォイキノボリカンガルーと考えてほぼ間違いないという。フラナリー氏は1990年代にニューギニア島のキノボリカンガルー4種を詳述し、キノボリカンガルーに関する著書もある。

 今回の発見は信頼性が高いだけでなく、ほかのキノボリカンガルーの生息地から何百キロも離れているという特徴がある。ウォンディウォイキノボリカンガルーは約100〜200平方キロの狭い範囲に暮らしていると推測されるが、フラナリー氏によれば、引っかき傷と排せつ物の多さは「狭い範囲で驚くほど繁栄している」ことを示唆しているという。(参考記事:「【動画】かわいい!けど無名の“ミニカンガルー”」

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