鶏に乱用の抗生物質、耐性菌の温床と識者が警告

目的は「成長促進」、米では人間の4倍を家畜に投与、その実態と展望を聞く

2017.09.22
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――2014年に、米国の鶏肉販売会社パデューが突然の方針転換を発表しましたが、これはどんな重要な意味を持っていたのでしょうか。

 米国では長年の間、鶏肉だけでなく豚肉や牛肉の生産業者が、抗生物質の使用に関して足並みをそろえてきました。ところが、2014年にパデュー・ファームズの会長で創業者の孫にあたるジム・パデュー氏が、記者会見で抗生物質の使用を中止すると宣言して、業界に衝撃を与えました。しかも、過去7年以上抗生物質の使用を抑えるために取り組んできたとも明かしたのです。(参考記事:「オープンソースな養鶏は可能か」

 メリーランド州に本社を置くパデューは、米国で4番目に大きな鶏肉会社で、年間90億羽の鶏を生産しています。そのパデューの発表がきっかけで、業界の足並みは崩れました。同社は一歩前に進み出て、これまでの流れを転換させると宣言したのです。

 これが突破口となり、それから食品製造、小売、ファストフード企業が次々に抗生物質の使用を減らしていくと発表しました。コストコやウォルマート、マクドナルド、タコベル、サブウェイ、さらにはケンタッキーフライドチキンさえもです。

 とは言うものの、米国をはじめ世界中で、鶏肉の細菌汚染はいまだに高い確率で発生しています。北欧やオランダなど、以前から抗生物質の使用を規制してきた国では、動物や人間の間で耐性菌の発生率が下がっているので、現在変化しつつある米国でも今後同じように感染リスクが減少していくことが期待されます。(参考記事:「オランダが救う世界の飢餓」

――本の締めくくりに、消費者の力が食卓に変化を起こすことができると書いていますが、特に低所得者にとって、安全な鶏肉が安く手に入るようになることはないのでしょうか。

 そこが、いまだに大きな問題点として残っています。富裕層だけが安全で良い肉を買うことができて、低所得者は安くて危険な肉で我慢しなければならないという事態をどのようにして防ぐべきでしょうか。その答えは私にもわかりませんが、今後取り組んでいかなければならない問題であることは確かです。(参考記事:「米国、食事の質の格差が2倍に拡大」

 抗生物質をどのように用いるか、食用鶏をどのように育てるかといった問題は、結局は消費者からの圧力にかかってくるでしょう。少なくとも1999年から規制が設けられているヨーロッパと違って、規制がほとんど存在しない米国の方で、より大きな動きがみられたのです。

 パデューに倣って抗生物質の使用を制限すると発表した企業はいずれも、規制があったからからそうしたのではありません。その時、米国にはまだ規制がなかったのですから。そうではなく、大手顧客からの強い要望に応えて動いたのです。病院、学校、調理師団体、農家、そして子を持つ普通の親たちが、これ以上質の悪い食品に金を払うのはごめんだといって、そろって声を上げた結果なのです。(参考記事:「国際比較調査、持続的な消費行動の現状」

文=Simon Worrall/訳=ルーバー荒井ハンナ

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