エジプト中王国の大規模墓地を発掘、墓800基

地下に広がる埋葬室「ウサギの巣穴のよう」、4000年前の豊かな文化示す

2018.09.14
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

地下に広がる埋葬室

 直近の調査が始まったのは2014年。パーカック氏と同僚の研究者たちが、盗掘用の穴の形跡を高解像度衛星画像で見つけたのだ。2009年から2013年にかけて、暗い色の小さなくぼみが画像上で増えていた。しかし上空からは、穴がどこに通じているのかはっきりしなかったと、パーカック氏は話す。

 続いて、ナショナル ジオグラフィック協会の一部支援を受けた現地調査が行われ、穴の大半が墓に通じていることが判明した。チームは、各地点で画像とGPSの座標を収集しつつ、墓の特徴を丹念に記録して、この地域に関するデータベースをまとめていった。

アンテフの墓で見つかった供物台。周辺の墓は大半が盗掘に遭っていたが、それでも研究者たちは遺構を調べ、中王国の文化について手掛かりを得たいと考えている。(PHOTOGRAPHY BY SARAH PARCAK)
[画像のクリックで拡大表示]

 縦に掘られた多くの墓穴は中に埋葬室があり、最大で8つの部屋があった。したがって、この連結した埋葬室群に少なくとも4000人が葬られ、死後の世界にいると考えられる。(参考記事:「写真で見る古代の文化と副葬品14選」

「彼らは、使える空間は全て使っていました」とパーカック氏は言い、墓が密集したこのシステムを、曲がりくねったトンネルだらけのウサギの巣穴になぞらえた。「墓の多くは再利用されています。家族や孫、ひ孫、あるいはさらに世代の離れた遠い親戚が入ったりしていました」

鮮やかに着色された人物画。2017年12月、アンテフの墓で遺構を発掘中に研究チームが見つけた。岩をうがった構造物が他にもあり、アンテフの墓に似ていることから、発掘場所の南部には古代社会で上流階層に属した人々が葬られている可能性がある。(PHOTOGRAPHY BY SARAH PARCAK)
[画像のクリックで拡大表示]
縦に穴を掘った家族用の墓。リシュト南部の、新たに位置が確認された802の埋葬室の1つ。(PHOTOGRAPHY BY SARAH PARCAK)
[画像のクリックで拡大表示]

盗掘されていても時代を知る手がかりに

 研究者たちが現地入りしたときには、墓の大半が盗掘で空になっていた。パーカック氏はこれまでの研究から、2009年の不況と2011年の革命に続く経済の混乱期に、エジプトで盗掘が激しくなったと考えている。リシュトも例外ではなかったようだ。

 だが、バード氏や他のエジプト学者たちは、それでも情報を拾い集めることはできると考えている。

 地図作成と記録の取り組みについて、古代エジプト調査協会(AERA)会長マーク・レーナー氏は「よい最初の一歩だったと思います」と評価する。陶器の破片、壁画の一部、人骨、さらには墓の構造自体も、研究者の助けになりうる。かつて首都に暮らしていた人々の健康や経済状態、埋葬の習慣について解明を進められるかもしれない。(参考記事:「河江肖剰:マーク・レーナー博士との出会い」

「私にとって、この仕事の価値はまさにそこにあります」とパーカック氏は言う。彼女は続けて、これら最新の発見は調査地域の南部に限定されているため、来シーズンは北部でも調査を続けることをチームは希望していると話した。

「エジプトのどの調査地もそうですが、まだたくさんの物が、位置も存在も知られずにあるのです」(参考記事:「フォトギャラリー:古代の黄金財宝、驚くべき9点」

【動画】古代エジプト入門
ピラミッドやファラオ、ミイラ、霊廟で有名な古代エジプト文明は数千年にわたって繁栄した。この文明は後にどんな影響を残したのだろうか。古代エジプトは多くの文化を発達させて社会に貢献した。ここでは特に言語と数学の功績を見てみよう(解説は英語です)。

文=Maya Wei-Haas/訳=高野夏美

おすすめ関連書籍

河江肖剰の最新ピラミッド入門

「世界ふしぎ発見!」(TBS系毎週土曜21:00~放送)でおなじみ新進気鋭の考古学者・河江肖剰氏が紹介する、「新しい古代エジプトの姿」。ピラミッドの基本から、ドローン計測など先端技術を駆使した研究の成果まで、写真と図でやさしく解説した新しい時代のピラミッド入門書です。ピラミッド内部の謎の空間にも言及しています。

定価:本体1,800円+税

  • このエントリーをはてなブックマークに追加