まるでSF映画のプロローグを見ているようだった。米国のトランプ大統領が6月18日、国家宇宙評議会の席で、米軍の中に宇宙専門の第6の軍を創設する考えを明らかにした。
「国防総省(ペンタゴン)に対し、米軍の第6軍となる宇宙軍創設に必要な手続きを直ちに始めるよう指示する。空軍があり、宇宙軍がある。両者は分かれているが、立場は平等だ」と語った。
このトランプ氏の発言を受けて、疑問を抱いた人もいるだろう。米国に、宇宙船に乗った兵隊が誕生するのだろうか。宇宙軍を作ることの利点と欠点とは?そもそも、そんなものが国際条約で認められるのだろうか。以下に、それらの疑問に答えてみた。
トランプ大統領は米国宇宙軍を創設したことになるのか?
まだ宇宙軍が誕生したわけではない。軍の新設を承認できるのは、議会だけである。
トランプ氏は、過去にも宇宙部隊を作りたいという考えを示していた。まずは2018年3月の演説で、そして同年5月の式典でも言及した。だが、大統領顧問がその前年にこのアイデアに反対したばかりである。
ヘザー・ウィルソン空軍長官は2017年6月、記者団に対して「ペンタゴンは今でも十分複雑な組織です。宇宙部隊の創設はそれをさらに複雑にしてしまうでしょう。組織図は拡大し、莫大な予算も要します。予算があるなら、官僚組織づくりではなく戦力強化に使いたい」と語っていた。
同年7月には、ジェームズ・マティス国防長官が宇宙部隊の法案に反対する文書を議会へ送り、議会は結局法案を破棄した。
だが、今でも議会の内外には提案を支持する人々がいる。宇宙は今やあまりにも重要であり、専門の軍が存在しないことは致命的だという。(参考記事:「億万長者たちの宇宙開発競争 勝つのは誰?」)
国家宇宙評議会の議長を1989年から1992年まで務めたマーク・アルブレヒト氏は、「宇宙には既に、数百億ドルというインフラが構築されています。金融取引からカーナビに使われるGPSまで、今やあらゆるものが宇宙から操作されています」と証言する。(参考記事:「ウナギ大海原の旅、衛星タグで初めて追跡」)
従って、宇宙における軍の活動は「もめ事や戦争を起こすためではなく、我々が享受するものがすべて守られている状態を維持するために米海軍が太平洋や大西洋、地中海を回るのとそれほど変わりはありません」と、同氏は指摘する。
血のように赤い惑星、生命維持の潜在性。人類の興味をひきつけてやまない火星が、ガスと塵からどのようにして生まれたか、また極地の氷冠が生命にとってどんな意味を持つかを解説(解説は英語です)。
宇宙軍は全く新しい提案なのか?
宇宙軍のアイデアは数十年前から検討されてきた。1999年、ボブ・スミス上院議員が政策文書で提案し、その翌年ドナルド・ラムズフェルド元国防長官率いる委員会が、海軍のなかの海兵隊と同様の扱いで、空軍内に宇宙部隊を設置する案を提出している。
アイゼンハワー大統領からオバマ大統領まで、米国は宇宙を自衛と非攻撃的な軍事活動の場ととらえてきた。ところが、宇宙軍創設というトランプ大統領の提案は、過去に例を見ない厚かましさだという意見もある。
「米国は、国防という観点から宇宙に意欲的に目を向けているとのメッセージを世界中に発してしまいます。ここでいう『意欲的』とは、米国が宇宙を潜在的な戦争の場ととらえていることを示唆しています。今に始まった考えではありませんが、あまり表立って表明するのは得策ではないと思います」と、ドッジ氏は言う。