【動画】南米の森の多様性、魚が育んでいた

浸水する森と、果実を食べる魚の切り離せない関係

2018.06.15
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 南米の湿地帯には、果実を食べる魚が少なくとも150種は生息している。ピラニアのなかにも、果実を食べる種がいる。樹木の結実はちょうど浸水の時期に重なっており、魚たちも数多く氾濫原へやってくる。水が引くと、肥沃な土壌は発芽に適した環境になる。長い消化管を持った魚に食べられれば、種子は長い間その体内に留まり、より遠くまで運ばれる。(参考記事:「メガピラニア――ジグザグの歯並び」

「5キロ以上先まで運ばれることもあります」。論文の共著者で、サンパウロ州立パウリスタ大学の生物学博士課程に在籍するラウル・コスタ・ペレイラ氏は言う。森林がこのように拡大していることはあまり知られていないが、これはアメリカ大陸に限った現象ではない。「果実を食べる魚は、世界中で記録されています」

世界最大の湿地帯であるパンタナールは、ブラジル、ボリビア、パラグアイにまたがっている。その森林はしばしば浸水し、それとともにやってきた魚や水生動物にエサとなる果実をもたらす。(PHOTOGRAPH BY CARL DE SOUZA, AFP/ GETTY)
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 陸地の15%以上を湿地帯が占めている南米で、魚と森の関係が初めて記録されたのは、1970年代後半のことだった。

 なかでも種子の散布者として大きな役割を担っているのは、パクーという大型魚だ。寿命は60年、体重は18キロに達する。大きな口の中に人間のような歯が並び、小型の魚よりも27%も多くの種の種子を散布する。そのパクーは、高級食材として漁の対象になっているが、パクーほどの大型の魚が乱獲されれば、植物の数と多様性は激減してしまう。(参考記事:「「睾丸狙う」は迷信、実際のパクーは?」

 サンフランシスコベイ・バード・オブザーバトリーの上級生物学者ダニエル・ウェニー氏も同意し、「種子の散布者である魚がいなくなれば、数種の樹木が減少するだけにとどまらず、はるかに大きな変化をもたらします」と語った。ウェニー氏も、過去に種子の散布について研究した経験がある。

 最悪の場合、新しい森林が育たなくなる。

森に迫る脅威

 ここでは、1年のうち4~7カ月にわたって浸水が続き、水位が9メートル上昇することもある。長い間、浸水する森林の90%を育んできた魚と森の関係が崩れつつあることを、コレア氏は心配する。ダムや牧場、開発によって、「今では魚が氾濫原の30~40%にしか散布できません」

 コレア氏らは、魚が森の成長に果たす役割を示す証拠を数多く集めて、大小の魚の漁を規制するよう働きかけている。パンタナールの99%は民間の牧場主が所有しており、放牧された牛たちが自然の草を片端から食べつくしている。小型の魚は、浅瀬まで泳いで新しいコロニーを形成しているとコレア氏は考えている。だが、規制もなくこうした魚が捕られているため、「個体群の大きさや状況を知ることができません」という。

 複数の国にまたがるアマゾンやパンタナールで規制を執行することは難しい。だが、乱獲の影響はすでに出始めている。魚が大きく育たなければ、森も成長できない。牧場が拡大し、ダムが増えて周期的に浸水しなくなれば、魚は締め出され、森は自然に再生する術を失い、死滅し始める。(参考記事:「アマゾンの巨大ダムが7割の動物を絶滅させる恐れ」

「多くの植物が、浸水の周期に合わせて種をつけています。広大な土地を保護する法整備が必要です。簡単な事ではありません」

ギャラリー:ナショジオが掲載した驚異の動物写真 38点(画像クリックでギャラリーページへ)
ブラジルのパンタナール大湿原。木の上の隠れ家に戻ってきた生後10カ月の幼いジャガー。(PHOTOGRAPH BY STEVE WINTER, NATIONAL GEOGRAPHIC)

文=Adam Popescu/訳=ルーバー荒井ハンナ

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