【動画】海中の微細なマイクロプラスチックが大きな問題に?
マイクロプラスチックは、スポンジのように周囲の化学物質を吸収し、しばしば食物連鎖に入り込み、ついには私たちの食卓に上がる。大きなプラスチック片が砕けてできたものが多いが、洗顔料や練り歯磨きなどの製品に含まれているものもある。(解説は英語です)

 食べもののくずが台所のシンクの中央に溜まるように、プラスチックごみは海の最も深い部分に集まる。

 学術誌「Geochemical Perspectives」に11月27日付けで発表された新たな研究によると、海洋の最深部に大量のマイクロプラスチック(大きさが5mm以下のプラスチック片)が集積している証拠が見つかった。これで科学者を悩ませてきた「失われたプラスチック」について説明できるかもしれないという。

 中国科学院の研究チームは、自ら採取した試料と、過去の論文から、13の地域について分析を行った。2018年前半には、海面下約1万1000メートルという、マリアナ海溝の最深部でレジ袋が見つかっている。この地域のプラスチックごみについてビデオ調査を行っていた研究者が発見した。(参考記事:「プラスチックごみに翻弄される動物たち 写真10点」

 目に付きにくいプラスチックについて調べるため、中国の研究チームは、採取した試料を分析し、堆積物や水1リットル当たりのマイクロプラスチック量を測定した。(参考記事:「9割の食塩からマイクロプラスチックを検出」

 マリアナ海溝の最も汚染された部分では、堆積物1リットル当たり2000個ものマイクロプラスチックが見つかった。ほかの深海部でこれを上回ったのは、グリーンランド海にあるハウスガルテン観測地の試料だけだ。水深約5500メートルで採取された試料には、1リットル当たりなんと3400個のマイクロプラスチックが含まれていた。(参考記事:「マリアナ海溝の深海生物、中国最悪の川超える汚染」

失われたプラスチックを求めて

 2014年に発表された論文によると、海洋に存在するプラスチックの99%近くが行方不明になっている。毎年約3億トンのプラスチックが製造されているが、世界の主な5つの海流の渦(こういった場所にプラスチックごみが集まりやすい)で調査船によるプラスチックごみの探索を行ったところ、発見できたのはわずか4万トンだった。失われたプラスチックの多くは、回収の難しいマイクロプラスチックになっていると考えられ、海洋生物に食べられている可能性もある。(参考記事:「『世界の廃プラ処理場』は中国から東南アジアへ」

 実際、マイクロプラスチックを海底に沈める一端を担っているのは海洋生物かもしれない。「動物プランクトンが摂取したマイクロプラスチックは、その排泄物と共に沈んでいきます」と、アイルランド国立大学の海洋生物学者、アリーナ・ヴィーチョレック氏は説明する。同氏は今年、深海魚の体内に大量のマイクロプラスチックが蓄積していることを示す研究論文を発表している。(参考記事:「人体にマイクロプラスチック、初の報告」

【参考ギャラリー】プラスチックごみに翻弄される動物たち、写真10点(写真クリックでギャラリーページへ)
ビニール袋のそばを泳ぐジンベエザメ。ジンベエザメは最大の魚だが、プラスチック片を食べてしまう危険にさらされている。イエメンに面するアデン湾で撮影。(PHOTOGRAPH BY THOMAS P. PESCHAK, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

 今回、中国の研究チームが調査した11種類のプラスチックのうち、水に浮くのは2種類だけで、残りの9種類はすべて最終的に水に沈んだ。採取されたプラスチックは青、赤、白、緑、紫色と色とりどりで、形は丸いものから棒状のものまでさまざまだった。(参考記事:「南太平洋の無人島にゴミ3800万個、日本からも」

深海生物への影響は?

「深海の圧力を実験室で再現することはまず不可能です」とヴィーチョレック氏は言う。

 深海の調査は非常に困難であり、大変な費用がかかる。ヴィーチョレック氏によれば、マイクロプラスチックの影響についてわかっていることのほとんどは、浅い海にいる生物から判明した知見だという。(参考記事:「イルカに化学物質が蓄積、プラスチック添加剤」

 マイクロプラスチックは海中の有毒物質を蓄積させやすい。大型で長く生きる海洋哺乳類は、長年の間に大量の小さな魚を食べるため、体内にプラスチックを溜め込むことになる。そうなると、捕食から繁殖行動まであらゆることが影響を受けかねない。浜に打ち上げられたクジラの胃の中から、8キログラム近くのプラスチックごみが出てきたこともある。(参考記事:「【動画】餓死したクジラ、胃にビニール袋80枚」

 マイクロプラスチックが浅い海の生態系に与える影響については理解され始めているものの、深海に関してはまだほとんど何もわかっていない。論文は「超深海(水深6000メートルより深いところ)は、地球で最大級のマイクロプラスチックのシンク(沈殿場)のひとつ」と結論づけた。そして、深海にプラスチックが溜まることでどんな影響が引き起こされるかは未知数、と付け加えている。

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