用心深い動物
他のイヌ科の動物とは異なり、ヤブイヌはとても用心深い。人間には近づかず、昼間は穴の中に潜んでいることが多い。(参考記事:「幻のジャングル犬の親子を撮影、おそらく初」)
ワシントン大学の非常勤講師で、ヤブイヌに詳しい生物学者カレン・デマッテオ氏によると、ヤブイヌはとても社会性の強い動物で、たいていペアで行動するという。
かつて行われた調査から、ヤブイヌの群れの縄張りはとても広く、80平方キロメートルほどにもなることがわかっている。それでも近くに住む別の群れの縄張りとは重ならない。
「体重は4~5キロほどですが、縄張りの広さはピューマ並みです。小さなヤブイヌは、大型肉食動物と同じ生態的地位を持っているのです」と、ナショナル ジオグラフィックが支援するエクスプローラーでもあるデマッテオ氏は話す。(参考記事:「【動画】ピューマの友情行動を初確認、通説覆す」)
考古学的証拠から、ヤブイヌはコスタリカ原産ではないことがわかっている。そのため、シッパー氏は、撮影されたヤブイヌは最近コスタリカに移動してきたのではないかと考えている。(参考記事:「絶滅寸前から復活、3500年続く古代犬種“ショロ”」)
ヤブイヌの将来は
しかし、多様な肉食動物がコスタリカで暮らしていけるかどうかは別の問題だ。今回ヤブイヌが見つかったタラマンカ山脈は、コーヒーやサトウキビのプランテーション、農地などに、ほぼ完全に囲まれつつある。
米ヴァンダービルト大学の生態学者マル・ジョルジ氏によると、ヤブイヌが土地利用の変化に適応できたとしても、獲物となる小型の齧歯類(げっしるい)やアルマジロなどは適応できない可能性もあるという。(参考記事:「動物大図鑑 アルマジロ」)
いずれにしても、ヤブイヌにとってこの状況は問題だ。国際自然保護連合(IUCN)は、ヤブイヌを「近危急種(near threatened)」に分類しているが、さらに希少な動物になってしまう可能性もある。(参考記事:「1万3000種って何の数字?」)
とはいえ、シッパー氏はヤブイヌがコスタリカにやってきたことにひとまず安心している。国土の4分の1が自然保護区域になっているからだ。(参考記事:「多様な色彩のカエル、コスタリカで発見」)
「ヤブイヌがコスタリカにいるということは、私たちが正しい方向に向かっているということです」とシッパー氏は話している。(参考記事:「『犬の楽園』へようこそ 約1000頭が暮らす野良犬の保護施設、コスタリカ」)