奇跡の恐竜、ゴツゴツの鎧で恋人探した?

きわめて保存状態の良い白亜紀のノドサウルス化石、172枚の装甲を丹念に調査

2017.12.04
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首に沿って生えているとげは背中の下部のとげより大きくて長い。装甲の間に模様のように見えるのは、硬い装甲を覆う軟組織だ。(PHOTOGRAPH BY ROBERT CLARK, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
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172枚の装甲を丹念に計測

 研究者は動物の社会生活や性生活を研究する際、その動物が成熟期に達すると急成長し、極端な大きさになる部分(例えばウシの角など)に注目することが多い。しかし、ボレアロペルタの場合、急成長するかどうかがわからない。成長率を計算するには、骨の試料が必要になるためだ。知られている限り、ボレアロペルタの化石はこの1つしかなく、骨格の大部分は装甲と皮膚によって覆い隠されている。

 そこで、ブラウン氏は全身における装甲の外見的変化を調べることにした。そして、172枚の装甲(生前の体を覆っていた全体の約3分の2と推定される)を一つ一つ丹念に計測し、前頭部のとげが背中のとげよりも誇張的に大きくて長いことを突き止めた。

 さらに、ひときわ目を引く肩のとげはまるでウシの角のようで、タイルのように平らな背中の装甲とは大きく異なっていた。

 こうした外見の誇張は、かつてタンパク質のケラチンでできていた軟組織にも見られた。多くの装甲がこの軟組織に覆われている。背中の装甲を覆う軟組織は厚さ2.5ミリほどしかなかったが、首の軟組織は2.5センチ以上も装甲を厚く見せていた。

古生物学者のジェイコブ・ビンター氏は、腹部を除く体の大部分が赤茶色のフェオメラニンに覆われていたと主張している。そうであれば、明暗の配色が捕食者から身を隠す助けになっていた可能性がある。さらに、肩の大きなとげも明るい色だった可能性がある。(MANUEL CANALES, NGM STAFF; PATRICIA HEALY. ART: DAVIDE BONADONNA. SOURCES: CALEB MARSHALL BROWN AND DONALD HENDERSON, ROYAL TYRELL MUSEUM OF PALAEONTOLOGY; JAKOB VINTHER; C. R. SCOTESE, PALEOMAP PROJECT)
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装甲は広告板だった

 ボレアロペルタは、なぜこれほど頭の周辺を飾り立てていたのだろうか?

 ブラウン氏は複雑な装甲を広告板にたとえている。この広告板は同じ種の個体を見つけたり、社会的な地位を争ったり、交尾の相手を探したりするのに役立っていた可能性がある。現存する動物の牙や角も、防御だけでなくこのような「見せる」役割を果たしている。(参考記事:「プロトケラトプスのえり飾りは求愛のため、新説」

 この解釈はブラウン氏の過去の研究とも一致する。過去の研究では、ボレアロペルタの肩のとげは全身を覆う赤茶色の皮膚より色が明るく、目立っていた可能性があると指摘している(ボレアロペルタは迷彩色だった可能性もある)。(参考記事:「恐竜にカムフラージュ模様見つかる、アライグマ風」

 一方、ボレアロペルタの社会生活を深読みし過ぎないよう警鐘を鳴らす研究者もいる。装甲の個体差や性差すらわかっていないためだ(化石の性別は不明)。

 論文の査読を行った英ロンドン大学クイーン・メアリー校の古生物学者デイビッド・ホーン氏は「この研究はとても素晴らしく、大部分は説得力があります」と評価する。「ただし、現時点でできることはすべてしたかもしれませんが、仮説を証明するには、化石による裏づけがもう少し必要です」

 今後、さらに化石が見つかれば、疑問点が明らかになるかもしれない。アーバー氏は鎧竜のズールの研究を率いている。まだ岩から完全に取り出されていないものの、こちらの化石も保存状態は良い。アーバー氏はズールとボレアロペルタの調査結果を比較できる日を楽しみにしている。(参考記事:「奇跡の恐竜化石、世紀の大発見 写真18点」

「私の直感では、今回の結果を支持するものになると思います」

【この恐竜の写真をもっと見る】ギャラリー:奇跡の恐竜化石、世紀の大発見 写真18点

文=Michael Greshko/訳=米井香織

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