年間140万頭、豪のカンガルー猟は是か非か

オーストラリアで増えているカンガルー、高級サッカーシューズや食用に

2017.11.26
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カンガルー肉は高級珍味?

 カンガルーの肉は、脂肪分が2%以下と少なく、天然で持続可能な食用肉として宣伝されている。また、強力な温室効果ガスであるメタンの排出量がウシやヒツジよりも少ない。オーストラリアでは多くのスーパーや精肉店で販売されているが、その人気は今ひとつだ。(参考記事:「カンガルーの肉で温室効果ガスを削減!?」

「多くのオーストラリア人は、国章にまで描かれている国を象徴する動物を食べるということに根深い抵抗があるようだ」。2016年に学術誌「Meat Science」に掲載された研究論文には、そのように書かれている。「かわいくて思わず抱きしめたくなる友好的な動物というイメージのカンガルーを食用にすることは、感情的に受け入れられない」

 カンガルー産業協会のケリー氏によると、カンガルー肉の約40%は国外へ輸出されているという。オーストラリア最大手の食肉卸業者マクロ・ミート社は、珍しい高級肉として海外市場へ向けて宣伝している。

オーストラリアの精肉店やレストランではカンガルーの肉が提供されているが、国の象徴になっている動物を食べることに抵抗を示す国民も多い。(PHOTOGRAPH BY JEFF GREENBERG, UIG/GETTY)
オーストラリアの精肉店やレストランではカンガルーの肉が提供されているが、国の象徴になっている動物を食べることに抵抗を示す国民も多い。(PHOTOGRAPH BY JEFF GREENBERG, UIG/GETTY)
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 カンガルー食肉業界にとって最大の課題のひとつは、食中毒対策である。ガイドラインは、夜間に狩りを行い、日の出から2時間以内に仕留めたカンガルーを冷蔵室に入れ、24時間以内に体内温度を細菌が繁殖できないレベルにまで引き下げ、その温度を維持するよう定めている。温度は、体内と冷蔵室に入れられたセンサーによって管理される。カンガルーの解体処理場は、牛肉や羊肉の処理場と同じ基準に従うことが義務付けられている。

 しかし、それでも食中毒の問題は時折持ち上がる。野生で仕留めた動物の処理を管理することは、飼育動物の管理よりも難しい。また、カンガルー肉は半生で食されることもあるため、食中毒の危険性もその分高くなる。

 2009年に動物愛護団体「アニマル・リベレーション」の依頼でカンガルー肉の検査を行ったところ、人体に有害な量の大腸菌とサルモネラ菌が検出された。ケリー氏は、依頼した団体の動機を考慮して、検査結果は額面通り受け取るべきではないとしているが、その一方で、過去にカンガルー猟の規制法案に携わった政府の元食品検査官も、業界における食の安全管理に疑問を呈している。(参考記事:「鶏に乱用の抗生物質、耐性菌の温床と識者が警告」

 今後、カンガルー産業はどうなっていくのだろうか。IBISワールド・オーストラリア事務局のシニア産業アナリスト、サム・ジョンソン氏は、カンガルー製品を人々がどう受け止めるかがカギだと答える。

「駆除された数は割当数に達していません。その主な理由は、需要がないからです。今後伸びていく余地はありますが、それは業界関係者がどれだけ上手く製品をマーケティングできるかにかかっています」

 2017年も、カンガルー猟とそれを取り巻く議論は続いている。今年の駆除割当数は、およそ750万頭だ。

文=Catherine York and Rachael Bale/訳=ルーバー荒井ハンナ

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