年間140万頭、豪のカンガルー猟は是か非か

オーストラリアで増えているカンガルー、高級サッカーシューズや食用に

2017.11.26
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駆除の割当数は年間780万頭

 オーストラリアの環境エネルギー省によると、2016年に割り当てられた駆除数は約780万頭だったが、実際に駆除されたのは150万頭にも満たなかった。

 カンガルー猟をめぐる最も大きな問題となっているのは、人間が個体数管理をすべきかどうか、もしするのなら、現行のやり方が持続可能であるかという点だ。豪タスマニア大学の生態学者で野生生物保護を専門とするクリストファー・ジョンソン氏によると、以前はディンゴ(オーストラリア原産の野生犬)がカンガルーの個体数調整の役割を果たしていたが、そのディンゴもまた、間引き駆除の対象になったため大幅に数が減少しているという。天敵が減り、農業開発によって水路や牧草地は増えたことで、カンガルーは数を増やしている。(参考記事:「動物大図鑑 ディンゴ」

 持続可能かどうかという議論は、実際のカンガルーの個体数を知らなければ始まらない。しかし、約780万平方キロに及ぶ広大な土地に散らばる動物を数えるのは並大抵のことではない。政府は、毎年地上と上空から個体数調査を行っているが、一部の生態学者や動物愛護団体は、そのデータを使って導き出された結論に疑問を投げかけている。(参考記事:「ドーナツを使ったクマ駆除は非倫理的?」

カンガルー猟は、夜間に人里離れた場所で行われることが多い。プロのハンターであるトニー・ギス氏(写真右)は、国が定める人道的な狩猟の行動規約に従うことが義務付けられている。(PHOTOGRAPH BY ADAM FERGUSON, THE NEW YORK TIMES/REDUX)
カンガルー猟は、夜間に人里離れた場所で行われることが多い。プロのハンターであるトニー・ギス氏(写真右)は、国が定める人道的な狩猟の行動規約に従うことが義務付けられている。(PHOTOGRAPH BY ADAM FERGUSON, THE NEW YORK TIMES/REDUX)
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 2011年に「危機に直面するカンガルー」と題した報告書を作成した生態学者のレイ・ミャドウェシ氏は、調査対象地域にはカンガルーが比較的多い国立公園などの保護区が含まれている点を指摘し、実際の個体数よりも多く見積もられたデータを基に狩猟割当数が決定されていると主張する。

 またミャドウェシ氏は、政府の個体数報告にはしばしば非現実的な数字が含まれていて信頼できないと言う。例えば、ある年、ニューサウスウェールズ州の町クーナバラブランに生息するオオカンガルー(別名ハイイロカンガルー)の数が313%増加したとの報告があったが、ミャドウェシ氏によればこの数字は「生物学的に不可能」だそうだ。他の地方政府も同じように大幅な増加を報告することがあるが、条件が整っていても、増加率は良くて15~17%だろうとミャドウェシ氏は言う。一部の研究では、まれに見る好天候に恵まれれば30%と計算しているが、これは死亡率やその他の修正要因を考慮しない場合である。(参考記事:「動物大図鑑 ハイイロカンガルー」「動物大図鑑 アカカンガルー」

人道的な安楽死の手段

 最近の降水量の増加でカンガルーも増えているが、子どもの生存率は低めで、干ばつやその他の環境変化の影響を受けやすい。2000年代、オーストラリアは記録的な干ばつに見舞われ、カンガルーの数は2380万頭にまで落ち込んだ。2010年頃に干ばつが収まると、エサも増えて数は再び増加し、2017年には推定5000万頭近くまで回復した。(参考記事:「第2回オーストラリア史上最大級の長期的な干ばつ」

【動画】カンガルー対カンガルー:まるで人間が素手で戦っているような動きを見せる、オス同士の対決。(解説は英語です)

 しかし、再び乾燥した夏が来れば、カンガルーたちはエサ不足に陥るかもしれない。その場合、狩猟は人道的な安楽死の手段になりうると、ニューサウスウェールズ州一次産業局の研究員であるトゥルーディ・シャープ氏は語る。「猟による個体数管理は、いずれにせよ干ばつで死ぬ運命にあるカンガルーを狙うのであって、時間をかけて苦しみながら死ぬ動物の数を減らしてやることにもなるのです」。この考えに賛同する野生生物管理者や保護活動家は多い。水やエサ不足で衰弱死するよりは、即死させてやった方がましというわけだ。

 動物学者で自然資源の持続可能な利用が専門のロージー・クーニー氏は、カンガルー猟の目的は個体数管理だけではないことを強調する。「カンガルーは、価値ある再生可能な資源であり、人間はそれらを注意深く持続可能なやり方で利用することができるのです」

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