「世界の廃プラ処理場」は中国から東南アジアへ

中国の輸入禁止によって、世界のプラスチックごみがあふれつつある

2018.11.21
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注目はマレーシア

 中国がプラスチックごみの引き受けを事実上停止したことにより、国内に無数にあった小規模リサイクル業者は、東南アジア各国に移転した。彼らは新たな工場を違法に建設し、輸入プラスチックごみの買い取りを始めた。英フィナンシャル・タイムズ紙のデータによると、2018年前半、プラスチックごみの輸入はインドネシアで56%、ベトナムで100%、タイで1370%増加している。

 マレーシアのイェオ氏は、プラスチックごみが東南アジア全域に大量に運び込まれ、自国がまたたく間に世界最大のプラスチックごみの輸入国になってしまったことを嘆いている。

 業界紙「Plastic Today」によると、東南アジアに拠点を移した中国のリサイクル業者の目的は、プラスチックごみを溶かしてペレットに加工したものを中国で売ることだという。彼らは、ペレットなら中国の税関検査を通るだろうと考えたのだ。ところが、ことはそう簡単には運ばなかった。税関の職員は、不純物の混ざったプラスチックはもちろん、ペレットのコンテナに紛れて密輸される低品質なプラスチックごみにも目を光らせている。6月の時点で、中国では、25万4000トンの密輸ごみに関わる134件の犯罪の捜査が開始されている。

【動画】ごみだらけの海を泳ぐマンタ(解説は英語です)

 一方、中国から移転した工場でごみ処理が開始される中、現地政府は工場の閉鎖に向けて動き出した。マレーシア、ベトナム、タイ、インド、インドネシアでは、リサイクルが不可能な輸入プラスチックに対して、立ち入り検査や新規許可証の凍結、新たな税金の導入、違法操業への強制捜査など、さまざまな対策を講じている。

 マレーシアでは、プラスチックごみを違法に輸入していた工場30カ所が閉鎖された。イェオ氏によると、同国政府はリサイクル不可能なプラスチックを永久に禁止とし、高価値なリサイクルプラスチックのみの輸入を許可する方向で動いているという。

 イェオ氏は言う。「非常に腹を立てていたころには、そもそものごみの排出国に、これを送り返してやりたいと思っていました。しかしその後、ごみの出処をたどることは不可能だと気づいたのです。自分が出すごみについて市民が理解していることと、実際にごみに起こっていることの間には大きな隔たりがあります。米国は、マレーシアへのプラスチックごみの最大の輸出国です。米国の人々は現実に起こっていることを知り、地球市民としての責任の一端を負うべきです」

緑の未来?

 イェオ氏が環境大臣の職に就いたのは、ほんの数カ月前のことだ。今年5月に行われた国政選挙において61年ぶりに与党が交代し、大臣に任命された。国内で違法な工場が急増するさまを目の当たりにしたことをきっかけに、イェオ氏は、より包括的な改革を推し進めて、2030年までに自国をよりグリーンな、使い捨てプラスチックをまったく使わない国にしようと決意したという。(参考記事:「ドミニカ国、2019年にプラスチック禁止へ」

 政府はすでにプラスチック(ビニール)の買い物袋を段階的に減らす対策に着手しており、まずはこれを有料とした。また、マレーシアの連邦直轄領内のレストランでは、2020年以降、使い捨てストローが禁止となる予定だ。(参考記事:「ストローはこうして世界を席巻した、その短い歴史」

 イェオ氏は言う。「われわれが思い描いているのは、プラスチックの使用を減らすだけでなく、マレーシアのプラスチック産業を変えることです」

 新たに誕生したばかりの政府が、前内閣を退陣に追いやった世界規模の財政スキャンダルの後始末など、様々な問題に対峙する一方で、プラスチックごみの問題にこれほど熱心に取り組むことは異例にも思える。しかしイェオ氏は、中国によるプラスチックごみの輸入禁止がきっかけになったと語る。

「おかげで目が覚めました」とイェオ氏は言う。「中国のプラスチックごみの輸入禁止によって世界が気づいたのは、われわれはプラスチックの使用について世界規模で再考しなければならないということ、そしてこの問題は、わたしたちの世代が解決しなければならないということです。2050年には、世界の人口は100億人になります。そのころ、プラスチックはいったいどれだけの量になっているでしょうか」

ギャラリー:海に流れ出るプラスチック 写真5点(写真クリックでギャラリーページへ)
捨てられたプラスチックシートをリサイクル業者に売るため、川で洗って乾かす母と子。バングラデシュの首都ダッカ。(PHOTOGRAPH BY RANDY OLSON)

文=LAURA PARKER/訳=北村京子

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