「世界の廃プラ処理場」は中国から東南アジアへ

中国の輸入禁止によって、世界のプラスチックごみがあふれつつある

2018.11.21
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リサイクルが抱える問題

 アルミ缶を世界で最もリサイクルに適した容器とするなら、プラスチックはその正反対の存在だ。アルミニウムは、何度でも再利用して新たなアルミ缶を作れる。一方、プラスチックの再利用回数には限りがあり、リサイクルすること自体が難しい。プラスチックには様々な種類があり、それぞれリサイクル方法が異なる。(参考記事:「バイオプラスチックは環境に優しいって本当?」

 最も一般的な7種類のプラスチックでさえ、樹脂の構成、色、透明度、重さ、形状、大きさなどがばらばらで、リサイクル作業は、複雑どころか不可能になる場合も少なくない。例えば、ソーダを入れるボトルとレタス容器とが異なる溶融特性を持っている場合、レタス容器はソーダボトルにとって異物となる。色付きのソーダボトルを透明なソーダボトルと混ぜることはできない。ヨーグルトの容器は、たとえ色が同じ白でも、牛乳の容器とは混ぜられない。ラップフィルムは、理論上はリサイクル可能だが、実際には食品の汚れが付着していることがほとんどだ。リサイクルを困難にする条件はあまりに多く、数えきれない。(参考記事:「プラスチックを「食べる」酵素、研究室で偶然作成」

リコロジー社がサンフランシスコに持つ最大のリサイクル工場では、1日に500〜600トンのごみが処理される。ここはスーパーのレジ袋も受け入れる米国内で数少ない工場のひとつで、その処理量は過去20年間で倍増した。ベルトコンベアーで運ばれるごみは光学式の選別機にかけられる。(PHOTOGRAPH BY RANDY OLSON, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 こうしたすべてを解決するには多大な手間がかかる。再処理の過程においてプラスチックの純度を保つには、プラスチックを手作業で分別するのが唯一の方法だとしても、それは富裕国にとってはありえない選択肢だ。これまではずっと、プラスチック廃棄物を積み上げてアジアに運ぶ方が、米国のリサイクル業者にとっては安上がりな方法だったのだ。(参考記事:「環境汚染で170万人の子どもが死亡、WHOが報告」

「プラスチックのリサイクルがうまく機能すると思ったことは一度もありません」と語るのは、米カリフォルニア大学サンタバーバラ校の工学教授、ローランド・ガイヤー氏だ。「金属に関しては持続可能なビジネスモデルが存在しますが、プラスチックにはそうしたものが一切ありません。プラスチックは価値が低く、不純物が多く、さまざまなポリマーが混ざり合っているためです。加えて、人件費を非常に低く抑えないと採算が取れません」

 一時期は、世界のリサイクル貿易の核となった中国のおかげで、この仕組みが成り立っていた。中国が安価な衣類をはじめとする合成繊維品の製造国として世界をリードするようになっていく中、プラスチックへの需要は増え続けた。米西海岸に製品を送り届けた中国の船は、現地のリサイクル業者から底値に近い輸送費で引き受けたプラスチックごみを積み込んで中国へ戻っていった。米国はまたたく間に、中国にとって最大の顧客のひとつとなった。

 2016年には、世界のリサイクル用プラスチックごみの半分は国際的に取引されるようになっていた。1992年以降、中国は世界の廃プラスチック全体の45%を輸入してきた。(参考記事:「海ゴミの出所を特定、1位は中国」

 サンフランシスコにあるリサイクル企業、リコロジー社は現在、コンテナいっぱいのリサイクル用プラスチックを太平洋の向こうまで運ぶために300〜500ドル(3万4千~5万6千円ほど)の輸送費を支払っている。米国内のプラスチック処理工場はその大半が南部にあり、同じコンテナをそこまで運ぶのにかかる3500〜4000ドル(約40万~45万円)という費用に比べれば、これは微々たるものだ。

 同社広報のロバート・リード氏は言う。「現在のリサイクル市場は、先行きが極めて不透明です。明日、来週、来年に何が起こるのか、誰にもわかりません」

 香港のリサイクル企業の会長を務めるスティーブ・ウォン氏は、今年中国が買い入れる廃棄物の量は、かつての年間購入量800万トンの1%程度にとどまるだろうと予測する。

 現在は米国を含む多くの国々がアジア各国の中から新たな買い手となる相手を探している。英国の調査ジャーナリズム事業「グリーンピース・アンアースド」の分析によると、2018年1月から6月にかけて米国が出した輸出ごみのうち81%がアジアに運ばれた。たとえば米国のリサイクル業者は今年前半、9万1500トンのプラスチックごみをタイに売却しており、これは2017年の同時期に売却された4400トンから1980%の増加だ。マレーシア、ベトナム、トルコ、韓国へのごみの売却も、今年6月までに急増している。

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