アフリカでワニの新種が見つかる、80年ぶり

800万年前にできた火山に分断され、別々の進化を遂げていた

2018.10.26
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失われていたタイプ標本

 近年、ワニの分類を見直す動きはほかにもある。たとえば、米国自然史博物館のジョージ・アマート氏は、コビトワニは1種ではなく3つの種に分かれることを示しているし、シャーリー氏とアマート氏のグループは、ナイルワニに2つの異なる種が存在することを見つけた。

 しかし、シャーリー氏によると、正式な記載と命名の手続きが行われたのは、1935年以降でM. leptorhynchusが初めてだ。米アイオワ大学や米フロリダ大学の助けを借り、世界中の博物館のたくさんの標本を選別するという作業も行われた。シャーリー氏自身も、アフリカ14カ国を巡る徹底的な現地調査を実施した。

 この作業は大変だった。西アフリカの種M. cataphractusについて、公式にこの種を定義する「タイプ標本」がどこにもなかったからだ。責任はナチスにある。シャーリー氏によると、第二次世界大戦中、ドイツ軍の爆撃機が英ロンドン自然史博物館を攻撃した際、このワニのタイプ標本が破壊されたらしいという。そのため、新しい標本を指定せざるをえなかった。さらに、M. leptorhynchusのタイプ標本が、種を判別しづらい若い個体であるということも、作業を困難にした。(参考記事:「世界を変えた航空戦「バトル・オブ・ブリテン」」

【ギャラリー】怖い? かわいい? ナイルワニ、写真13点(写真クリックでギャラリーページへ)
【ギャラリー】怖い? かわいい? ナイルワニ、写真13点(写真クリックでギャラリーページへ)
ケニアのトゥルカナ湖で遠隔カメラにいたずらをするナイルワニ。(PHOTOGRAPH BY RANDY OLSON, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

西アフリカの種は絶滅寸前

 今回の研究は、既存種と新種のどちらのワニの保護活動にもつながるはずだが、特に対応が急がれるのが西アフリカのアフリカクチナガワニだ。シャーリー氏らは、コートジボワール政府やガーナ政府、そしてさまざまなNGOと協力し、アフリカクチナガワニを飼育して野生に帰す活動を行っている。もっとも大規模な取り組みが行われているコートジボワールの動物園では、現在30匹以上のワニが飼育されている。

 生息地の喪失や密猟は、両方の種に影響を及ぼしている。残されたアフリカクチナガワニは少なく、とても見つけづらい。シャーリー氏は、「何カ月も何年も」かけてこのワニを探してきたが、最終的にDNAのサンプルを採取できたのは、わずか15匹から20匹だった。(参考記事:「ワニを殺してワニを守る、矛盾抱えるワニ猟に密着」

 状況は今までになく切迫している。シャーリー氏は、「絶滅の危機はすぐそこまで迫っています。いつ消えてしまっても不思議ではないのです」と話している。(参考記事:「世界最大のオアシス、国境を隔てた水源を守れるか」

文=DOUGLAS MAIN/訳=鈴木和博

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