土星の環から「雨」が降っていた、予想外の事実も

NASAの探査機カッシーニ最後の偉業、土星と環の関係に新たなシナリオ

2018.10.09
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研究チームごとに異なる「雨の量」

 さらにややこしいことに、論文を発表した3つの研究チームは、土星の大気中に落下する物質の量について、大きく異なる見積もりをしている。これは、各チームが土星のさまざまな場所で採集された異なる種類の物質を分析したせいかもしれない。

 あるチームは、D環から毎秒重さ5キロほどのナノ粒子が降り注いでくるとしている。別のチームは、氷、有機物、ケイ酸塩の粒子が毎秒45トンも降り注いでいるとしている。

 毎秒数十トンもの量については、最近の彗星の衝突により一時的に雨が増えたことで説明できるかもしれないと、科学者たちは考えている。しかし、ずっとこの量であるなら、つじつまが合わないとカジー氏は言う。土星の環には、これだけの量の雨を長期にわたって降らせるほどの質量はないからだ。

 さらにカジー氏は、土星の環から雨が降っているのは明らかだが、雨の量に関する数字から環の年齢について何かを見積もろうとするのは早すぎると指摘する。土星の環は、ほかの理由からかなり新しく、数億年前にできたと考えられているからだ。(参考記事:「土星の環ができたのは意外と「最近」だった?」

「環から降ってくる物質の量を測定して環の年代を測定できるというアイデアは、基本的には悪くありません」とカジー氏。「けれども多くの名案がそうであるように、実際にやってみると、いろいろ複雑なところがあるのです」

土星入門:土星の環はどのようにしてできたのだろう?衛星はいくつあるのだろうか?かつてクリスチャン・ホイヘンスやジョヴァンニ・カッシーニが調べた巨大なガス惑星の姿をNASAの最新技術がとらえた。(解説は英語です)

砕け散った衛星

 カッシーニがもたらした新たなデータは、そもそも土星の環は何からできたのかという謎解きにも役立つ。これまでに得られたデータが示唆しているのは、砕け散った衛星または彗星から土星の環ができたという可能性だ。

 カジー氏によると、土星のC環にはケイ酸塩を豊富に含む物質が集まった奇妙な場所があるという。衛星が砕け散ると、まさにこのようなものができるはずだ。

 衛星は成長するにともなって、ケイ酸塩に富む岩石がコア中に沈み込み、凍った軽い物質がマントルを形成しただろう。この衛星を土星が引き裂いたとすれば、衛星のコアの破片からはC環ができ、マントルの氷からはひときわ明るいA環とB環ができたと考えられる。(参考記事:「土星の環は思っていたより軽かった」

 何十億年も安定していたと思われる土星系で、なぜ数億年前になって環が形成されたのかはまだわからない。土星と砕け散った衛星との相互作用の詳細についても不明である。

「土星の物語はまだ完結していません」とコナニー氏は言う。「ただ、多くの章のアウトラインはできています」

【参考ギャラリー】さよならカッシーニ、写真で振り返る輝かしき偉業 19点(写真クリックでギャラリーページへ)
2009年8月、春分や秋分のように土星のちょうど半分が太陽に照らされる姿(昼夜平分)をカッシーニは初めて目撃した。太陽は土星の赤道の真上に来ている。(PHOTOGRAPH BY NASA, JPL, CASSINI)

文=Nadia Drake/訳=三枝小夜子

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