2024年に人類を火星へ、米スペースXが発表

野心的な火星移住計画の変更点を発表、倫理的な問題を指摘する声も

2017.10.04
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野心的な目標

 マスク氏は野心的な人物として知られる。スペースX社はロケットの一部を安定して再利用できるようにした最初の企業であり、彼がCEOを務めるテスラ・モーターズ社の電気自動車は数年先まで予約リストが埋まっている。また、サンフランシスコとロサンゼルス間をわずか45分で結ぶ、次世代交通システムハイパーループも開発中だ。(参考記事:「夢の超音速列車ハイパーループ、試作機の段階に」

 しかし彼が提案するスケジュールはいつも性急で、宇宙開発の専門家たちを呆れさせている。たとえばスペースX社は巨大ロケット「ファルコン・ヘビー」の打ち上げを何年も前に予定していたが、未だに実現に至っていない。(参考記事:「【解説】月周回旅行、スペースXの実現力は?」

 おそらくはこうした遅延に対する批判を牽制するために、マスク氏は皮肉を込めて、2022年という打ち上げ予定は誤植ではないと言い、ただしこれは「強い願望に近いもの」ではあると付け加えた。

 元NASAの主任技術者で米コロラド大学ボルダー校のボビー・ブラウン氏は言う。「スケジュールや実現性はたしかに野心的ですが、私はアメリカの産業界には遠大で挑戦的な目標を達成する力があると信じています。民間部門がこうした面でリードしていくのはすばらしいことですし、さらに盛んになってほしいものです」

 一方、大きな障害のひとつとなるのが財政的な問題だ。スペースX社には自社で資金を賄うだけの余裕がなく、出資者を見つけるのは容易ではない。(参考記事:「技術と費用の壁、火星旅行計画の変遷」

 マスク氏はこの点について、「わが社は資金調達の手段を見つけました。これは非常に重要なことです」と述べている。

 その手段のひとつは、ファルコン9と国際宇宙ステーション(ISS)用補給船「ドラゴン」を大量に建造し、それに見合うだけの物資輸送ミッションを請け負うことだ。(参考記事:「ドラゴン、ISSへ初の正式な物資輸送」

 数年以内に、スペースX社の経営資源はすべてBFR建造に投ずることができるようになるとマスク氏は言う。「この計画は、衛星の打ち上げや、宇宙ステーションへの物資輸送による収入によって実行可能だと考えています」

火星移住の問題点

 しかし、マスク氏は言及していないが、人類を火星に送り込むことは、倫理的に重大な問題をはらんでいる。たとえば、人類自身や、人類が作った機器が惑星を汚染する可能性がそのひとつだ。もし火星に生命がいるとしたら、人類の侵入によってそれを傷つけてしまうかもしれないし、そこに地球外生命が存在したのかどうか判断する機会さえ失ってしまうかもしれない。(参考記事:「地球生物による宇宙汚染、対策は?」

【動画】地球の「ばい菌」を火星に持ち込まないために:火星に着陸した探査機4基の設計に携わったNASAの機械工学者コビー・ボイキンス氏が、人類が火星を汚染する可能性と、NASAによる対策について解説する。(解説は英語です)

 火星への有人飛行は定住に向けた第一歩だ。その後には、火星を実際に居住可能にする必要がある。現在のところ、空気、土壌、水といった環境面において、火星は人間の居住にまったく適していない。(参考記事:「2020年、NASAの火星生命探査はこうなる」

 マスク氏はかつてこの問題に言及し、火星を地球環境に近づけるテラフォーミングを行い、生命が生存できる豊かな世界を作ればいいと語っている。彼がそのための手段として挙げたのは、火星の極地に核爆弾を投下し、地下に閉じ込められている氷をすべて蒸発させるというものだ。(参考記事:「火星に都市を建設、テラフォーミングは可能?」

 こうした過激な行為は、人類よりも先に火星に生命がいた場合、破滅的な結果をもたらす。米議会図書館の宇宙生物学長ルシアン・ウォーコウィッチ氏は、別の世界を地球の代替品として利用し、しかもその過程で現場を破壊するというのは、大きな欠陥のある考え方だと語る。

「人類の待避場所として火星があると言うのは、タイタニックの船長が本当のパーティは後で救命ボートで行われますと言うなものです」。2015年のTEDトークにおいて、ウォーコウィッチ氏は述べている。「地球の過酷な環境下で居住可能な空間を作り出す方法がわかれば、人類はそれを、地球の環境を保護することと、他の惑星を探査することの両方に役立てることができるのではないでしょうか」

マーズ 火星移住計画

現実味を帯びてきた火星有人探査・移住プロジェクトの全容を美しい写真・イラストとともに解説。

レオナード・デイヴィッド 著
天地230mm×左右276mm、288ページ、ソフトカバー
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文=Nadia Drake/訳=北村京子

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